異能者シリーズ

異能者。
それは常識では考えられない力と精神を秘め、それを具現化させる超常たちの総称である。
彼らは生まれながら、或いは人工的に、或いは人を超越した何者かによって誕生させられた。かつて異能者はその人外の性能を持って、世界各地で秘密裏に開発され、兵器として活用されてきた。
一部の例外を除いて異能者、特に人の手によって作り出された異能者は、戦争の道具だった。異能の力を支配目的に活用し、世界中でその猛威を奮った。
それだけ、異能者の力は絶大だったのだ。それぞれの国が勢力争いに勝利するため、異能者の研究は日進月歩で進められた。
……しかし、その研究は長い年月をかけた事で、ある段階で未知の領域に到達してしまう。人の手では絶対に辿り着けないパンドラの箱。異能者は、度重なる研究開発の末、ついにその箱を開いてしまったのだ。
そして、そこから始まったのは逆襲だった。
異能者たちは、その圧倒的な力を持って人間たちに反乱した。一斉に迎えた、異能者たちが巻き起こした破壊と災厄は、多くの人々の命を奪った。
人間と異能者、二つの勢力の争いは世界レベルで行われ、最早どちらかが滅びない限り戦いは終わらないように見えた。
そんな中だった。ある日突然、天空に闇色の光が迸り、そこから一人の人物が現れた。
今では"魔神"と呼ばれるその存在は、瞬く間に各地の戦争を終結させた。長年の研究開発の末、神にも等しい力を手に入れた異能者たちでさえ、魔神に敵う者はいなかった。
そして世界中の戦争を終わらせた魔神は、人々にこう伝えた。
『この世界にある全てを、俺の支配下とする！』
それから、世界は魔神のものとなった。
戦争を推進せんと、数々の権力者や強大な異能者たち魔神に挑んだが、いずれも魔神を倒す者は現れなかった。人間と異能者との戦争は、この刻をもって完全に途絶え、世界に平和が訪れたのだ。
……もう200年以上昔の話である。血を流すことの無くなった人類は、二つの勢力を平等に扱う政策を進めた。結果、人間と異能者は共に生きていくことに成功し、安永の時を迎えたのだった。