プロローグ
雨が降っていた。
私は傘を持っていたはずなのに、
気づけばどこかで失くしてしまったみたいだ。
ぽつぽつと肩を濡らす雨粒を鬱陶しく思いながら、
私は見知らぬ路地を歩いていた。
おかしい
この辺りに来た覚えはないのに…
大通りから一本入っただけのはずなのに、
まるで別の場所へ迷い込んでしまったような
静けさだった。
人の気配がないし
車の音も聞こえない。
ただ雨音だけが、
石畳を濡らしている。
その時だった。
路地の奥に、
小さな灯りが見えた。
古びた店だった。
木製の看板は雨風に晒されて色褪せている。
ショーウィンドウの向こうには、
人形やアクセサリー、
それに古い本や時計が並んでいた。
どれもどこか懐かしくて、
どこか不気味だった。
「……こんな所に店なんてあったっけ」
思わず呟く。
すると…
――カラン。
勝手に扉が開いた。
驚いて立ち止まった。
そしたら店内から暖かな灯りが漏れた。
そして…
「いらっしゃいませ」
柔らかな男の声が聞こえた。
覗いたら店の奥に、
一人の男が立っていた。
年齢の分からない不思議な男だった。
優しそうに微笑んでいるのに、
なぜか目が離せない。
「雨宿りでもどうぞ」
そう言われると、
不思議と断る気になれなかった。
私は店の中へ足を踏み入れる。
その瞬間
いきなり
背後で扉が閉まったのだ。
――カラン。
その音が、
妙に大きく響いた気がした。
「何か気になる品はありますか?」
店主は穏やかに尋ねてきた。
私は何気なく、
近くの棚に置かれていた
古い銀色の指輪へ手を伸ばしてみた。
不思議な指輪だった。
今にも誰かの体温が残っていそうなほど、
温かく感じた。
すると店主が微笑んでこう言った。
まるで、
それを待っていたかのように…
「その品にまつわる恋物語を知っていますか?」
私は首を横に振った。
そしたら店主は静かに目を細める。
「それはですね――」
外では雨が降り続いていた。
まるで誰も帰さないと言うように。
そして私はまだ知らない。
これから聞く物語が、
ただの恋愛話ではないことをね…
人ならざる者たちが抱いた、
狂おしいほどの愛の記録であることを。
そして
いつか自分自身も、
その物語の一つになるかもしれないことを――。
私は傘を持っていたはずなのに、
気づけばどこかで失くしてしまったみたいだ。
ぽつぽつと肩を濡らす雨粒を鬱陶しく思いながら、
私は見知らぬ路地を歩いていた。
おかしい
この辺りに来た覚えはないのに…
大通りから一本入っただけのはずなのに、
まるで別の場所へ迷い込んでしまったような
静けさだった。
人の気配がないし
車の音も聞こえない。
ただ雨音だけが、
石畳を濡らしている。
その時だった。
路地の奥に、
小さな灯りが見えた。
古びた店だった。
木製の看板は雨風に晒されて色褪せている。
ショーウィンドウの向こうには、
人形やアクセサリー、
それに古い本や時計が並んでいた。
どれもどこか懐かしくて、
どこか不気味だった。
「……こんな所に店なんてあったっけ」
思わず呟く。
すると…
――カラン。
勝手に扉が開いた。
驚いて立ち止まった。
そしたら店内から暖かな灯りが漏れた。
そして…
「いらっしゃいませ」
柔らかな男の声が聞こえた。
覗いたら店の奥に、
一人の男が立っていた。
年齢の分からない不思議な男だった。
優しそうに微笑んでいるのに、
なぜか目が離せない。
「雨宿りでもどうぞ」
そう言われると、
不思議と断る気になれなかった。
私は店の中へ足を踏み入れる。
その瞬間
いきなり
背後で扉が閉まったのだ。
――カラン。
その音が、
妙に大きく響いた気がした。
「何か気になる品はありますか?」
店主は穏やかに尋ねてきた。
私は何気なく、
近くの棚に置かれていた
古い銀色の指輪へ手を伸ばしてみた。
不思議な指輪だった。
今にも誰かの体温が残っていそうなほど、
温かく感じた。
すると店主が微笑んでこう言った。
まるで、
それを待っていたかのように…
「その品にまつわる恋物語を知っていますか?」
私は首を横に振った。
そしたら店主は静かに目を細める。
「それはですね――」
外では雨が降り続いていた。
まるで誰も帰さないと言うように。
そして私はまだ知らない。
これから聞く物語が、
ただの恋愛話ではないことをね…
人ならざる者たちが抱いた、
狂おしいほどの愛の記録であることを。
そして
いつか自分自身も、
その物語の一つになるかもしれないことを――。