短編集

冬の敦賀から東舞鶴へ、小浜線に揺られる2時間の旅。 車窓に広がる海や湖、港町の景色が、主人公の心に大学時代の思い出を呼び起こす。 進路に迷い、美咲や友人たちと語り合った夏の日、雨宿りの午後、夕暮れの海//

差出人不明の手紙が、冬の郵便受けに舞い込んだ―― それは、孤独な心を少しずつほどく、小さな景色の贈り物。

冬の港町にひとり帰ってきた志織は、亡き祖母が暮らしていた古い家を片付けるため、長く封じてきた記憶と向き合うことになる。 埃をかぶった家具、潮風に染み込んだ木の香り、そして押し入れの奥から見つかった、宛//

冬の早朝、公園のベンチで出会ったのは、毎日朝焼けを見に来る老人・辰夫。 寡黙で、けれど優しいその人との会話は、進路も夢も見えなくなっていた高校生・透の心に、少しずつ温かな光を差し込んでいく。 やがて季//

毎朝、通勤途中にすれ違う踏切の向こうの女性。 名前も、住まいも、何も知らない。ただ、赤信号の向こうで交わす小さな会釈が、いつの間にか彼の一日の始まりになっていた。 だがある朝、彼女の姿は消えた。 気づ//

閉店間際の楽器店で、埃をかぶった古いピアノに出会った若い女性。 そこで待っていたのは、音楽に未練を抱える老女との小さな邂逅だった。 忘れられた旋律が、ふたりの止まった時間を静かに動かしていく――。

夕立に追われて飛び込んだ小さな喫茶店で、彼は偶然、かつての恋人と再会する。 雨音を背に交わす会話は短いけれど、その中に積み重ねた年月と、消えない想いが滲んでいた。 過去と現在が交差するひととき――二人//

最終電車が去った夜の駅ホームで、久しぶりに再会した二人の親友。 離婚や挫折を抱える現在と、学生時代の無邪気な思い出が交錯する。 静かなホームに響く会話は、過去を振り返りながらも、新たな一歩への小さな希//

入院中の祖父と孫娘の病室での対話。過去の後悔と家族への想いが語られ、やがて小さな未来への希望が芽生える。静かな別れと温かな絆を描いた人間ドラマ。

仕事に疲れた中年サラリーマンと、部活に悩む少女。 木漏れ日の差す古いベンチでの出会いが、互いの心に小さな光を灯していく――。

雨の日の交差点で始まった小さな助けが、次々と人々に渡り、思いがけない形で巡り巡る。 善意の連鎖が紡ぐ、誰もが少しだけ温かくなる日常の物語。