中村の研究の軌跡

ナラティブアプローチを様々な手法で研究する姿をまとめた。

中村の研究アプローチ：エスノグラフィーと参与観察
研究の背景
社会学者の中村大介は、美穂たちの「意図的ピアサポート」活動に出会い、その可能性に強い関心を抱いた。従来の量的研究では捉えきれない、ピアサポートの持つ深い意味や参加者の内面的変化を明らかにするため、中村は質的研究手法、特にエスノグラフィーと参与観察を中心としたアプローチを採用することを決意した。
研究手法
1. エスノグラフィー
中村は、「意図的ピアサポート」のグループに長期間にわたって参加し、その文化や相互作用のパターンを詳細に観察・記録した。この手法により、表面的な数値では表現できない、参加者間の関係性の変化や個人の内面的成長のプロセスを捉えることが可能となった。
2. 参与観察
研究者として客観的な立場を保ちつつも、中村自身もピアサポートのセッションに参加者として加わった。この「参与観察」により、部外者では得られない深い洞察や、参加者の実際の体験に基づいた理解を得ることができた。
3. 深層インタビュー
定期的に参加者や美穂たちスタッフに対して、半構造化インタビューを実施。これにより、個々人の経験や変化のプロセス、「意図的ピアサポート」に対する認識の変化などを詳細に記録した。
4. ナラティブ分析
参加者たちの語りを詳細に分析し、その中に現れる共通のテーマや変化のパターンを抽出。これにより、「意図的ピアサポート」がもたらす効果を、参加者自身の言葉で描き出すことが可能となった。
研究プロセス

準備段階: 中村は、美穂たちと綿密な打ち合わせを行い、研究の目的や方法について合意を形成。倫理的配慮についても十分に検討を重ねた。
フィールドワーク: 約2年間にわたり、定期的にピアサポートのセッションに参加。観察記録やフィールドノートを詳細に作成した。
データ分析: 収集したデータを体系的に整理し、コード化。繰り返し現れるテーマや概念を抽出し、理論化を試みた。
理論構築: 得られたデータと分析結果を基に、「意図的ピアサポート」の効果メカニズムに関する理論モデルを構築。
検証と修正: 構築した理論モデルを、新たなデータや参加者のフィードバックと照らし合わせ、継続的に検証・修正を行った