恋哀怪篇

「明日は、貴女の誕生日だね」 届いたのは、数年前に死んだ恋人からのLINEメッセージだった。 あのとき、わたしはほんの出来心で、彼女を裏切った。 笑顔で去っていった彼女は、のちに自ら命を絶った―― //

あの傘は、たしかに仕舞ったはずだった。 何年も前、恋人と別れた日の駅に置かれていたその傘を、わたしは拾い、二度と使わないと決めて、玄関の奥にそっと仕舞い込んだ。 なのにある日、職場の傘立てに――ま//

二年前に姿を消した“親友”――有村。 4月の終わり、まるで梅雨のような雨が続いていたある日―― わたしのロッカーに差し出された一通の手紙が、静かに日常を狂わせていく。 ロッカーの中には、見知らぬ//

「あの子」と別れを告げたのは、あたしの方だった。 進行する病に気づきながら、彼女の未来を守るために、あたしは身を引いた。 それなのに、ある日スマホの中に、見覚えのない写真が増え始める。 写ってい//

──届かぬ想いは、運ばれる。存在しない“始点”から。 この世界には、決して届かず、拾われず、還ることもできない“想い”がある。 忘れたはずの記憶、伝え損ねた言葉、そして、残された未練。 それらを密//

深夜ラジオから流れてきたのは、かつて愛し、そして“食べた”はずのあの子の声だった。 「あたし」の匿名のお便りは、やがて「あたしたち」の記憶と肉体を交錯させ、現実を侵食していく。 ――その声は、あた//

失ったはずの声が、箱の中から語りかけてくる。 “ひまり”との再会に心を救われかけたみおだったが、箱の奥底にはもう一つの“声”が潜んでいた。 優しさと呪いが交錯する中、彼女が見た“記憶の真実”とは―//

夢の中だけで生きる 最愛の彼女―― ある夜、その囁きが わたしを呼び寄せる 「目を、覚まさないで」 現実は削られ 夢が侵食する やがて辿り着くのは 幸福という名の溺死か 終//