蓮の糸 第1部

作成ユーザ: 村井由弥
 彩羽はある日ひとりの青年と出会った。いまも鮮明に思いだせる、彼とのやりとり。

「蓮の君、蓮様、ハス姫、私たちはいろんな呼ばれ方をしていますよ」
 そう言った青年の微笑みが空気を揺らした。花顔とはこういう人を指すのだろうと彩羽は思った。
 数秒間その清涼な空気感に浸ってから、ふと口を開く。
「はす……姫?女性なんですか?」
「どうでしょう。それは身体のつくりの違いで決まるものですか」
 昨今では答え方が難しい。口元に拳を当てて考えている彩羽を見て彼は尋ねた。

「確認しますか。よろしければ」
「いえ、結構です」
 彩羽は心の内で前言を撤回した。

 2人が初めて交わしたまともな会話はそんな風だった。美化できない記憶だってある。残念ながら。

 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 主な登場人物
 玄川彩羽(くろかわあやは)・・大学1回生
 玄川実咲(くろかわみさき)・・彩羽の双子の妹
 梓ゆみ(あずさゆみ)・・彩羽の大学の友人
 青年・・彩羽が植物園で出会った人物

 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 拙作の連作短編『群青新世界』の登場人物のひとりに焦点を当てた物語です。

蓮の糸 第1部 The Lotus Threads.

「蓮の君、レン様、ハス姫、いろんな呼ばれ方をしていますよ」   そう言って彼は柔らかく微笑んだ。花顔とはこういう人を指すのだろうと私は思った。 「はす……姫?女性なんですか」 「どうだろう。確認なさい//
作品情報 N6984MC 連載中 純文学〔文芸〕
掲載日:2026年 07月 19日
最終掲載日:2026年 08月 04日
キーワード: 日常 青春 恋愛 人間関係 友人 学生 季節 片思い