火星のジャンヌ・ダルク　ルナン・クレール伝

地球西暦２３世紀の未来。太陽系第四惑星火星には人類が移住を開始して約百年以上の時を経ていたが、未だに赤い惑星の地上には植民地村一つとして存在していなかった。移住開始から僅かの年月に、ある氏族が禁忌を破り、生身の人間の遺体を直接火星の土に還そうとした事から、想定外の猛悪なウィルス“ブロー・ド・マルス”が蔓延り、火星を新天地とした人々の植民都市は壊滅状態となり、宇宙へと逃れた。しかし、さりとて地球への帰還をも拒否された生き残った人々は窮余の策として、小惑星型改造宇宙都市となる軌道要塞を建設。この人工世界を新たな繁栄の拠点とした。
　火星の移民者たちとその子孫はブロー・ド・マルスを駆逐するを放棄して、火星の衛星軌道上に軌道要塞を次々と建設、己が新たな世界として営々と持続させてきた。
　その末裔にあたる一介の宇宙軍士官ルナン・クレールは、女性ながら風雲の志を持って新たに加わる仲間たちと共に苦難を乗り越えていく。ある時彼女は正体不明の存在から不意の攻撃を受け、自分が所属する艦隊の艦艇が次々と撃沈される危機に見舞われる。艦長、副長とも不慮の事態で亡くなり、ルナンは代理艦長として困難に立ち向かうことに。果たして彼女は無事に生還することが出来るのか？
　これは後に火星のジャンヌ・ダルクとして人々の希望を糾合、団結せしめ、地球からの圧倒的侵攻軍『火星鎮撫軍』へ果敢に挑んだ一介の女傑、ルナン・クレールの物語である。