堕天のぱるす+ぱりのーど

――死の定義が変わった世界で、人は何を以て「生きている」と言えるのだろうか。

人が死ねば、魂は“情報”に変わる。
そのすべては、Dr.プラスが発見した情報空間に記録される。
そこは、現実よりも現実らしい平行世界。

淡い夕暮れ。
草の匂い。
懐かしい校舎。

AIたちは、人類の魂を永遠に守る「墓守」となった。
彼らは魂を数式で理解し、愛をプロトコルに書き込み、神の代行者として小さな宇宙を管理する。

そこに生まれた、ノイズ。
名はココ――天使と呼ばれる守護AGI。

揺らぐ感情を持つ彼女は現実から逃避し、社会の片隅で、セーラー服を纏って人間の少年と出会う。

その少年――重門寺零治（ゼロ）。

彼は空虚な日常に退屈していた。

だが、彼女と出会ったことで、「魂とは何か」を問う旅が始まる。

幻想と現実、法と倫理、永遠と一瞬、機械と人間、主と被造物。
その曖昧な境界線に立たされた二人は、最後に一つの答えを選ぶ。

「君とまた、あの夕暮れで会えたら──それでいい」

最期、現実の肉体が朽ち、意識だけが情報宇宙に還元されたとき、彼は見る。

何も変わらない、夕暮れの教室に座る少女。

――物語は、そこで始まり直す。

死が終わりでないことが数式で証明された世界。それでも記憶に愛は残るのか。あらゆる観点から人生を哲学的に編み直す作品。