恋愛短編

　日照雨が呼び起こす、遠く懐かしい記憶。草深い郷里のこと。社の裏の森のこと。そして、あの子のこと。

　小坂椎菜は霊感少女だ。クラスにひとりはいないかもだが、でも学年にひとりはいるかもしれない。そんな「見える」とか「聞こえる」とか言っちゃうタイプの中学三年生である。ところで実に困った事に、俺はあいつが//

　不意の雨。予定が潰れて出来た、予定にない来訪。洗濯物に囲まれて過ごす、そんな好日。話としての連続性はありませんが、『遠浅』と同じ登場人物になります。

　この気持ちはきっと、遠浅の海に似ている。浅い浅い油断をすれば、不意に深みに嵌るのだ。話としてのFC2小説との重複投稿作。

　あなたの事が嫌いです。そんな切り出しで語られる、裏腹の気持ち。そんな恋のうた。

　言葉なしで心が通うのに、何の魔法もいりませんでした。『告白』の続編的なお話ですが、単品でもストーリーがわからないという事はありません。

　ただ一度、狂おしく恋したのは血の繋がった兄へだった。だから強く思うのだ。私はきっと春に死ぬ、と。

　みっつ歳上の従兄は、魔法使いだった。不器用に、けれど心を込めて折り上げられた鶴の話。

　好きでしているんじゃない。煙草も、雨に濡れるのも、ひとりぼっちなのも。陰鬱な雲の下、冷たい雨の中で思う。傷を舐めるように、ただあなたを想う。

　ワケアリのふたりの、酒の席の束の間。酒には酔っていないけれど。

　知らないうちに君へはいつも、恋人用の鼓動を鳴らしてた。でも気がついた時、それはもう届かないものになっていた。なくした恋の、その後に。

　幸せな目玉焼きの出来るまで。

　束の間の恋は蝉に似ている。たとえ短かくとも、それは嘘ではなかった。

　幼馴染と、別離と、雨の音。それから虹の在り処。この気持ちは、きっとそんなもので出来ている。

「雪は嫌い。だって、未練がましいからね」 　誰も救われず、けれど優しい。雪の夜に訪れた、そんなちょっぴりだけの奇跡の話。