狂イ神
かつて神とは、人々の信仰を糧として神器に宿る、“情報生命体”の一種であった。 しかし文明の開花と科学の発展により、次第に信仰は薄れ、やがて神々は“壊死”した。 主を失った神器は、概念と力のみを残し、神という存在の抜け殻を蓄えたまま、静かに朽ちていく――はずだった。 だが、かつて深く信仰されていた神器ほど、強大な“信仰エネルギーの残滓”が宿っていた。 それは何者かの手によって黒い「神因子」として外部へと流出し、やがて人間に触れる。 神因子に触れた者の内側に、かつての神が宿り始める。それは信仰ではなく、“侵蝕”であった。 人々は心の内――《心界》に神の鱗片を育て、自我も身体も、神と共に蝕まれていく。 やがて言葉を失い、名を失い、意志を失って、“影虫”と化し崩れ落ちる。 それが、奇病――《神喰症候群》である