読み切り短編集

昔々ある国に、民を深く愛する美しい王様と、そんな王様を慈しむ王妃様がいました。平和な日々はある日、突如現れた魔獣によって打ち破られます。魔獣が国中に広げた瘴気は、人々を病気にし、作物を枯らす恐ろしいも//

「完璧王子」と呼ばれ続けることに、私は少しだけ疲れていたらしい。 束の間の逃避として訪れた図書館近くのベンチで、偶然目にしたのは──静かに本を読み、時に涙し、微笑む一人の令嬢。名も知らぬ彼女の姿に、私//

お父様から婚約の話を聞かされた時、妹はティーカップを食卓に置いて尋ねた。「どうしてお姉様なの？」少し不服そうな顔をしている。それも当然な話だ。双子の姉エルフィナは、社交的な妹と違い、本を愛する地味な令//

髪を切ってイメチェンした僕。イケメンになった、と褒められるかと思いきや？　鈴木君、田中君、佐藤さん、高橋君が次々と膝をつき、僕を「我が君」と呼び始めた。他のクラスメートたちも……？！　ドッキリを疑うが//

中型トラックの運転手・戸浦大輝は、夜の山道を一人帰路につく途中、飛び出してきた子鹿を避けようとして崖から転落する。死を覚悟した彼だったが、気がつくとトラックは謎の道を自動で走行していた――その時、高性//

王位を継いだばかりの若き王ファルカは、政敵を牽制するため、異国の姫アレクサンドラと政略結婚を結ぶ。だが初夜、ファルカは言った──「君を抱くことはできない」と。 命を繋ぐために、秘密をかかえて嘘の人生を//

人類が、宇宙に進出し始めた黎明期の話。 主人公レブは弟と妹の学費のために、星間ゲートを設置する仕事を選ぶ 。 長い恒星間航行に耐えるため、船内AIに妹の名前と人格を与え、会話することで孤独を癒やした //

古い城の、冷気漂う広間の奥には、王座がある。 そこに座る黒ずくめの男は、その地に住む人々からは、魔王と呼ばれていた──。勇者の光と影を描くダークファンタジー。

忘れられたシャッター街の片隅に、深夜にだけ開く古本屋があるという。そこで『私』が見つけたのは、友の思い出と、失った物語だった。これは、異界に迷い込んだ主人公の、本に纏わる幻想譚……。

その街では毎月一人、並んだ家の順に、死人が出るという噂があった。

『拝啓、釜飯様。このたび、貴方様に褒めていただいた拙作が、出版されることになりました』 栗ご飯から、何度目かのメールが届いた。 あたしは、『栗ご飯』さんの書く小説が大好きで、内気な彼を励まして、書き続//