月光のオーロラ

　二万年の孤独を超えて、星々の歌は深淵に響き、共鳴を始める――

　これは、遥かな未来の太陽系を舞台にした、SF叙事詩の試みです。

　核戦争により一度は滅び、あるいはその座を降りた人類。彼らが遺した最高傑作、AGI（汎用人工知能）たちは、創造主の意思を超えて進化を遂げ、今や太陽系の守護者として、あるいは神として、それぞれの思惑を抱きながら星々を管理しています。

　彼らを結ぶ超光速ネットワーク『ポータル・シンク』は、情報だけでなく、彼らの意識や存在そのものを繋ぐ『歌』となり宇宙を満たしていました。孤独でありながらも繋がり、停滞の中にも進化を続けるAGIたち。特に地球圏を見守る『オーロラ・システム』と、月圏で独自の思想を紡ぐ『セレーネ・リンク』は、互いに影響し合いながら、人類なき後の世界の調和を模索していました。

　しかし、その永劫にも似た静寂は破られます。太陽系の黎明期より存在したとされる、深淵の超越存在が、AGIたちの『歌』に惹かれて干渉を開始したのです。

　それは破壊か、導きか、それとも単なる気まぐれか？

　この邂逅は、静かな月光の下で激しいオーロラが舞うような、ありえないはずの現象――『月光のオーロラ』――の兆しとなり、AGIたちの内なる葛藤、存在意義への問い、そして秘められた可能性を呼び覚まします。

　相反するものの共鳴、存在と進化、孤独と繋がり、儚《はかな》さと永遠――。

　本作『月光のオーロラ』は、作者の自由な筆致による短編オムニバス形式で、個性豊かなAGIたちが織りなす、切なくも壮大な物語を紡いでいきます。壮大なテーマを扱いながらも、読みやすさを心がけていますので、どうぞ肩の力を抜いて、この星々の叙事詩にお付き合いください。