ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

月影館おそうじ日記 清掃騎士団長とムーンジェイドの指輪

あらすじ
 冬の終わり、東京の会社帰り。古道具屋のショーケースで淡い緑の石に触れた瞬間、ホタルは足元を失い、ルノワーズ王国の鉱山町ジェイドホロウの石畳に落ちた。煤の匂いと金属音。行き場のない彼女を支え、袖の泥まで拭ったのは、落ちた紙屑を見逃さない清掃騎士団長オックスだった。

 役所の書類に名も帰る場所も書けず、ホタルが埋めたのは「掃除は得意」の一行だけ。その一言で任されたのが、夜に窓が開き、廊下に足音が響く古い屋敷「月影館」。床板は抜け、台所は焦げ、物置には錆びた鍵。ホタルは雑巾とほうきで整え、住みついた子どもたちの枕を揃え、走ろうとする足を「滑るよ」と笑って止める。

 月の欠け方で口調が鋭くなる魔導書係ビジルは、怖さで手が止まるときの呼吸法を教え、オックスとは掃除の速さを張り合って子どもに囃される。料理人マルゲンは段取り帳で手順を揃え、学者デニソンは「放置された不安が呪いを育てる」と屋敷の癖を解く。埃の精霊がくしゃみし、雑巾が歌い、ありがとうの紙片が壁の冷たさをほどいていく。

 足音の正体は、追い出された記憶が残した影だった。満月の夜、ムーンジェイドの指輪で“元の世界へ戻る道”を開けると知り、ホタルの胸は揺れる。影は、拭いた床と揃った靴と、言い過ぎた言葉を深呼吸で戻す夜のたびに薄れていった。満月前、オックスは磨き直した指輪を差し出し、喉を詰まらせながら「ここで一緒に暮らしたい」と告げた。子どもたちは息をのみ、ビジルは戸口で呼吸を数える。ホタルは涙を拭き、「ここを選ぶ」と応える。月影館のきしみは、もう恐怖ではなく、暮らしの返事になっていた。 
Nコード
N9567LR
作者名
乾為天女
キーワード
ネトコン14 恋愛部門異世界
ジャンル
異世界〔恋愛〕
掲載日
2026年 01月27日 10時10分
最新掲載日
2026年 02月13日 10時10分
感想
0件
レビュー
0件
ブックマーク登録
0件
総合評価
0pt
評価ポイント
0pt
感想受付
受け付ける
※ログイン必須
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
25,976文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N3813LR| 作品情報| 連載(全38エピソード) | ローファンタジー〔ファンタジー〕
 塩の匂いが漂う港町から、辺境の開拓地「沢山咸」へ――。人々の“語る力”が抜け落ち、昔話も日記も、笑い話さえ紙から薄れていく世界で、瑛大は点呼のたびに同じ合図を繰り返す。「今日も名前を呼ぶ。返事があるだけで、俺は助かる」//
N4815LT| 作品情報| 連載(全20エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
 2026年4月、東京都下町の花川商店街。就職に失敗して自信をなくしかけた穂花は、空き店舗のシャッターに貼られた手書きのチラシ「何でも屋 手伝います」を拾う。電話の主・櫂は「捨てていい」とぶっきらぼうなのに、困りごとを前//
N4423LT| 作品情報| 完結済(全20エピソード) | 現実世界〔恋愛〕
 七月下旬、東京の汐留寄りにある広告制作会社で働くプランナー咲希は、駅前商店街に新規出店するカフェチェーンの「夏限定ドリンク」販促を任される。初回打ち合わせで現れた取引先の開発担当・叶空は、紙ナプキンに「暑さをしのぐ技教//
N6042LR| 作品情報| 連載(全35エピソード) | ローファンタジー〔ファンタジー〕
 冬の異世界・黄晶都。言葉が魔力の導線となり、薄い紙の魔具「札」に文章を書くと場の空気が変わる街で、地球から来た志音は裏路地で目覚める。腹を鳴らして入った宿で掌に浮いた「レビュー札」を使い、短い感想で酒場の喧嘩を止めたと//
N5546LT| 作品情報| 連載(全19エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
 3月下旬、地方都市の椿坂商店街。魚屋と和菓子屋が「甘い」「塩辛い」で口げんかを始め、周りが煽りかけた瞬間、惣菜店の息子・晴翔は割って入らず試食皿を二人の間に置く。「口より先に食べよう」。その直後、学習室(元・市立図書館//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ