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娘が猿

短編
あらすじ
「ふふ、ほーら、パパが帰ってきまちたよお。ふふふ……あっ、ほら、あなた、どうしたのよ。この子に『ただいま』は?」

「あ、ああ……ただいま」

「もう、なに緊張してるのよ。自分の娘なのに、変なパパねえ。ねー。ふふ……」

 夜、家のリビング。ソファに腰かけた妻は、娘を胸に抱き、機嫌よく揺らしていた。おれはその光景にそっと後ずさった。喉が渇いたなあ――言い訳めいた呟きをこぼし、冷蔵庫へ向かった。
 ドアを開けた瞬間、棚に並ぶ飲み物を前にして、まるでパズルを前にしたかのように、何を取ればいいのかわからなくなった。頭の中は真っ白で、冷気だけがやけに心地よい。しばらく突っ立ったまま動けなかった。
 結局、何も取らずに静かにドアを閉じた。ゆっくりと振り返ると、妻は娘の小さな腕を持ち上げ、おれに向けてひらひらと手を振らせていた。おれはまたもや、何をすればいいのかわからなくなった。どんな顔を作ればいいのかすらも。
 あの猿に向かって――。
Nコード
N9076LO
作者名
雉白書屋
キーワード
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ジャンル
ヒューマンドラマ〔文芸〕
掲載日
2026年 01月07日 11時00分
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文字数
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