ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

春の境目、精霊(しょうりょう)に手紙を焚く

短編
あらすじ
紙漉きの里に暮らす澪は、山で亡くなった兄・律へ宛てた手紙を何通も書き溜めていた。封をしても宛名がない。届けられないままの言葉が胸の棘になっていたからだ。

春の境目、3月18日の「精霊(しょうりょう)の日」。婆さまに導かれた澪は、今夜だけ開く川原の焚き場へ向かう。注連縄の内側で待っていた火守・朧は言う。「焚くのは手紙。供えるのは本心だ」。嘘や他人を縛る言葉、相手を戻したい言葉は燃え残り、渡せないのだと。

澪は書けなかった最後の一行に向き合う。冷たく突き放したのは強がりだった。「呼び止めてほしかった。……でも呼び止めるのは私だった」。その言の葉を添えて手紙を焚くと、文字は淡い光の葉となってほどけ、風に乗って“しょうりょうの道”へ流れていく。澪は兄の声ではなく、癖や温度のような気配に見送られ、胸の棘が少し抜けるのを感じる。

だが火には、燃え残った紙片が落ちていた。『戻ってきて』。重すぎる言葉は渡せないと朧は告げる。澪はそれを「私はここから歩く」と言い換え、もう一度焚く。
家へ戻った澪は、母に自然に言える。
「ただいま」
燃えたのは文字で、残ったのは明日。春の境目の夜が、澪の歩き出しになる。
Nコード
N8632LV
作者名
星渡リン
キーワード
精霊 言霊 春 祈り
ジャンル
ローファンタジー〔ファンタジー〕
掲載日
2026年 03月18日 07時00分
感想
0件
レビュー
0件
ブックマーク登録
3件
総合評価
88pt
評価ポイント
82pt
感想受付
受け付ける
※ログイン必須
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
6,917文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N9078LX| 作品情報| 連載(全23エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
侯爵令嬢セレフィーナ・アシュクロフトは、王立学園の中庭で悟った。 自分はこれから、“悪役令嬢”にされるのだと。 第一王子ルシアンは守る側。 平民出身の編入生ミレイアは守られる側。 なら、その物語を完成させるには、最後に//
N5381LX| 作品情報| 連載(全14エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
前世では、誰も気づかない“雑用”で職場を支えていた総務職。 会議室の予約、備品管理、連絡調整、進行確認。 派手ではないけれど、誰かがやらなければ全部止まる仕事を抱えたまま、私は過労で倒れた。 次に目を覚ましたとき、私は//
N3973LX| 作品情報| 短編| ハイファンタジー〔ファンタジー〕
 乙女ゲームの悪役令嬢、ロザリア・エーデルフェルト。  その破滅の原因は、陰湿ないじめでも、嫉妬に狂った策略でもなかった。  ただひとつ。  言い方が、致命的に悪役っぽすぎた。  そんなお嬢様に仕える侍女へ転生した//
N4097LX| 作品情報| 短編| ハイファンタジー〔ファンタジー〕
乙女ゲームの世界に転生したローゼリアは、自分が悪役令嬢を作り上げる“継母”の立場だと思い出す。 本来なら彼女は、継娘リディアを厳しく育て、主人公に敵意を向ける高慢な令嬢へ仕立て上げるはずだった。 けれど実際に出会ったリ//
N3539LU| 作品情報| 完結済(全60エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
 本作は、短編「悪役令嬢の母になりました。断罪より先に子どもを連れて舞台から降ります。」を、連載向けに加筆・再構成した物語です。  短編では、王都の夜会で娘クラリスが口にした“悪役令嬢みたいな台詞”をきっかけに、母マリ//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ