短編
- あらすじ
- 戦国時代の末ごろ。日光のとある川のほとりで若い彫り物師が自殺に適した濁流をさがしていた。実はもう場所は決まったが覚悟がなかなか決まらずにいた。
日光ではある寺院の大造営が行われており、この彫り物師も参加していたのだが、ちょっとばかり評判になったせいで天狗になり自分を見失って世俗的な作品を仕上げてしまった。いよいよお披露目の日に自分の堕落ぶりに気づいた彼は己の愚かさに絶望したのだ。
自殺することにしたが決心がつかずうろうろしているうちに雷雨にあい、ついその場を逃げてしまったとき、謝って彼は深い洞窟に落ちる。失神したあと目をあけるとそこには巨大な龍が寝ていた。
龍は人間が落ちてきたことに気がついてはいたが相手にしなかった。龍は天界軍を率いる大将軍で今は戦闘中であり、またかなりの傷を負っていた。何よりも戦争の原因となった宝玉を龍は天帝より預かっており、つまらない人間など眼中になかった。
ところが若い彫り物師のほうは龍に夢中になった。その造形があまりにも完璧で美しく思えたのだ。なめるように龍を観察した若者だが、とうとう龍の開いた目を見たくてたまらず、無理に龍を起こしてしまった。
若い彫り物師は自分の熱狂を龍に語り、その完璧な美が戦いによって傷つけられていることに憤り、ついには龍の持つ万能の宝玉でその体の傷を自ら癒すべきだと力説する。
しかし龍は別の目的にその玉を使った。その何でも見通す玉の力で若者のみじめな現状をさぐりあてたのだ。己の愚かさとみじめさもかえりみずに上位の存在たる自分に意見することをなじり軽蔑する龍。若者はいっぺんにへこんでしまった。
龍がそう思ったのもつかの間、若者は再び活気を取り戻した。やっと自分の彫りたいものがわかった、それは龍の完璧な美しさだ、だから自分はまだ生きたいと息巻いたのだ。
思わぬ反撃に心を打たれた龍は戦いに戻っていき壮絶な戦死を遂げた。
何十年か後。年老いて名人となった彫り物師は龍の生まれ変わりの青年の訪問を受ける。
あの日の自分の美と憧れへの情熱に打たれて自分に弟子入りするため転生したという龍を彼は受け入れ共に創作の道を歩むのだった。
そして時は現代。彼らの作品が我々に訴えかける……
- Nコード
- N8566FS
- 作者名
- 一の瀬光
- キーワード
- 異世界転生 伝奇 ほのぼの ダーク 人外 和風 中世 魔法 ハッピーエンド 職業もの
- ジャンル
- ローファンタジー〔ファンタジー〕
- 掲載日
- 2019年 09月06日 21時35分
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