エラーが発生しました。
エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。
- あらすじ
- 夜、ドスドスと重たい靴音を響かせながら、男が団地の外廊下を歩いていた。足取りは鈍く、まるで靴底に鉛でも仕込まれているかのよう。背中は丸まり、口は半開き。今にもドロドロに崩れ落ちそうであった。
ようやく自室の前にたどり着くと、ポケットから鍵を取り出し、肺の奥の空気をすべて吐き出すように深く息をついた。
額に滲んだ汗を手の甲で拭い、鼻をすすり上げる。四階まで階段を登ってきたせいで――ということにしたい――呼吸は荒く、心臓は嫌に強く脈打っていた。こうなることは想像がついていた。それでも男はエレベーターを使う気にはなれなかった。ただ立って待つあの時間が、今夜の彼には耐えがたいものだったのだ。
しかしこうして自室の前に立って鍵を手にしていると、張り詰めていた心は少しずつ落ち着きを取り戻し始めていた。
- Nコード
- N8201LC
- 作者名
- 雉白書屋
- キーワード
-
キーワードが設定されていません
- ジャンル
- ヒューマンドラマ〔文芸〕
- 掲載日
- 2025年 09月27日 11時00分
- 感想
-
0件
- レビュー
-
0件
- ブックマーク登録
- 0件
- 総合評価
- 10pt
- 評価ポイント
-
10pt
- 感想受付
- 受け付ける
- レビュー受付
- 受け付ける
※ログイン必須
- 誤字報告受付
- 受け付ける
※ログイン必須
- 開示設定
- 開示中
- 文字数
- 1,755文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから
同一作者の作品
N9550LC|
作品情報|
短編|
ヒューマンドラマ〔文芸〕
プンチュプテゥ……。それについて語ることは、すなわち人生そのものを語ることに等しい。
聡明で、常に感受性のアンテナを張り巡らせている読者諸君ならば、とっくにプンチュプテゥを知っており、すでに日常生活に取り入れているこ//
N9547LC|
作品情報|
短編|
ヒューマンドラマ〔文芸〕
「ほら、ここなんかいいんじゃないか? な? な?」
「ふうん……」
彼女が訝しげに返事をした。『どうせ、予約しないと無理なんじゃないの?』とでも言いたげな目つきである。
まあ、無理もない。今日は彼女の誕生日。本来//
N8212LC|
作品情報|
短編|
その他〔その他〕
「……この世界の始まりと終わりを見てくる」
装置をじっと見つめていた博士はふいに振り返り、ニッと笑った。
助手はぼうっと突っ立っていたが、次の瞬間『ああ、今のは自分に向けて言ったのか』と気づき、慌てて神妙な顔で頷い//
N8201LC|
作品情報|
短編|
ヒューマンドラマ〔文芸〕
夜、ドスドスと重たい靴音を響かせながら、男が団地の外廊下を歩いていた。足取りは鈍く、まるで靴底に鉛でも仕込まれているかのよう。背中は丸まり、口は半開き。今にもドロドロに崩れ落ちそうであった。
ようやく自室の前にたどり//
N1318LC|
作品情報|
短編|
その他〔その他〕
「ようこそ、おいでくださいました」
夜、とある屋敷の玄関ホール。重厚な扉が開くと同時に、青年は深々と頭を下げ、来客を迎えた。
老人たちは思わず「おお」と声を漏らし、皺の刻まれた顔を綻ばせた。
「久しぶりだなあ。立//
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。