↓ ↑ページトップへ

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

潮待ちのレール ― 潮鳴りの門 ―

あらすじ
春がさらに進み、相沢湊は再び春口へ戻る。
宿の庭に置かれた風やぬくもりが、少しずつ日常へ馴染み始めたころ、今度彼の目に留まるのは、宿の玄関口と門まわりの時間だった。
人は宿へ入るときだけでなく、宿を出るときにもまた、そこで少しだけ自分の速度を変える。
春口の宿の門は、ただ人を送り出すための境目ではなく、内側で受け止められた時間を、町へ返していくための場所だったのである。

篠原が見つけた古い記録や、近隣の聞き書きを通して、湊と汐里は、澄江が人を迎えるだけでなく、人が宿のぬくもりや遅さを少し持ったまま町へ戻れるように、門や玄関の時間をとても大事にしていたことを知る。
門を出る前に立ち止まる人。
振り返る人。
帽子をかぶり直す人。
潮の音を一度だけ聞いてから坂へ出る人。
そうした小さな所作の中で、人は宿の時間から町の時間へ少しずつ戻っていく。

また汐里は、庭をあずかる人となったその先で、宿を“守る場所”ではなく、“人をまた町へ返していく場所”としても考え始める。
母のように見送るだけではなく、自分の手で門のひらき方や見送りの距離を調え、宿の内側であたためられたものを、外の潮の音へなじませる側へ回っていく。
一方、湊もまた父を、遅れた人、待ちが長くなる人としてだけでなく、どこかで宿を出て、また町や海へ戻っていった一人の人として見直し始める。

『潮鳴りの門』は、宿の内側で受け止められた時間が、再び町の時間へひらかれていく物語である。
受け止める宿から、送り返す宿へ。
春口という町の“境目のやさしさ”を、門と潮の気配の中で静かに描く第十三作。
Nコード
N8056MC
シリーズ
潮待ちのレール
作者名
たむ
キーワード
現代
ジャンル
純文学〔文芸〕
掲載日
2026年 08月27日 15時00分
最終掲載日
2026年 09月04日 15時00分
感想
0件
レビュー
0件
ブックマーク登録
0件
総合評価
0pt
評価ポイント
0pt
感想受付
受け付ける
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
27,392文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N5999KQ| 作品情報| 連載(全388エピソード) | ホラー〔文芸〕
―人の闇に、妖(あやかし)は映る。だが、影を作るのは、いつも人間だ。 現代日本。 都市の片隅でひっそりと探偵業を営む男――城戸蓮司(きどれんじ)・35歳。 過去のある事件をきっかけに、“人には見えぬもの”にも目を向ける//
N9366LH| 作品情報| 連載(全311エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
灰が降っていた。 まるで天が、ひとつの名家の終焉を弔うように。 ヴァルステッド家の紋章は、炎の中で静かに崩れ落ちる。 罪は知らぬ。だが罰だけが与えられた。 まだ幼い少女の瞳に、赤い世界が焼き付く。 忠臣は断末の声を上//
N3490KZ| 作品情報| 連載(全350エピソード) | 童話〔その他〕
春、夏、秋、冬――四季の移り変わる日常の中で、子どもたちは小さな冒険を繰り返します。 学校の教室や校庭、図書館、公園、そして家やおばあちゃんの庭まで、身近な場所での発見や遊び、挑戦が次々と描かれます。 それぞれは独立し//
N8570ML| 作品情報| 連載(全75エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
住宅設備会社で、便器の販売から設置、修理までを担当していた陶山直人は、古い便器の交換工事中、工具箱と新品の便器を抱えたまま異世界へ転移してしまう。 剣も使えず、魔法も使えない直人がたどり着いたのは、排泄物を壺にため、道//
N1462MH| 作品情報| 連載(全143エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
自動販売機の補充員として働く田村誠司は、配送中にトラックごと異世界へ転移してしまう。 見知らぬ草原で途方に暮れる誠司だったが、翌朝、ある異変に気づく。 減っていた飲料がすべて補充されている。 さらに、半分まで減って//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。