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小さな娘とほんの少しの嘘

短編
あらすじ
「あっ……」

滅多に聞かない「驚き」の感情が入り混じった娘の声が聞こえた。

「髪が……変」

言われてみてみると、なるほど金に染められた髪が時間を経て色が落ち、黒と混ざってストライプめいている。

だけどそれでいいんじゃないか? 小学生は大体髪なんて染めないだろうし。

「これ……ママが……わたしにしてくれたもの……これだけは、してくれた」

死んだ人間を持ち出してくるのはずるいし、なんというかそのセリフには複雑な気持ちになる。俺はそのモヤモヤを飲み込みながらいつもお世話になってる会社の先輩に相談してみた。

「何、あんたの彼女の髪の話私はされてんの?」
「彼女なんていませんよ……娘です。例の」
「んー……ああなるほどね。それでオシャレかつ心が優しいかつ話の早い私に相談してきたってわけね」

さすが、話が早い。
仕事が終わった後に付き合ってもらった。

「こんなのとかいいけどね。泡だからムラなく染められるし、多分娘さんの髪ってトーン高めだよね。トリートメントしてる? しなきゃダメだからね。このタイプだったら問題ないけど」

髪の話だけでなく私生活までアドバイスをもらって、俺は反省しながら家に着いた。出迎えてくれたのは心なしかいつもより何かを欲した眼差しを向けてくる無言の娘。

俺はバスルームにまで連れて行き、早速髪を染めてやる事にした。

痛いから、目は開けるなよと言って。

次に鏡見た時、娘は驚きのあまり声が出なかった(まあいつも無口といえば無口だが)。

「く……く……くろい」

そう、俺がしたのは染め落とし。

「これ……ちゃんと……元に戻る?」
「いや、黒のままだ」
「な……」

なんでと、口がパクパク開いている。俺はその様子に心を痛めながらも、先輩な話を思い出していた。

『まあ結局髪染めなんてしない方がいいんだけどねー。当たり前じゃん。そりゃあダメージあるよ」

俺は先輩の選んでくれた染め落としを使った。髪の色をダメージなく落とすのも本来なら難しいらしいが、流石先輩も出来る女性という事なのだろう。

「俺は黒が好きだ!」

そんな事を抱き締めながら言う俺は、多分出来る男とは程遠いのだろうけど。

「それじゃあ……だめか?」

呆気にとられる娘だったが、そんな俺を気遣うように優しく微笑みながら頷いた娘は、きっと良い女性になってくれるに違いない。
Nコード
N7718FK
作者名
watausagi
キーワード
年の差 日常 ホームドラマ 無口
ジャンル
現実世界〔恋愛〕
掲載日
2019年 04月07日 05時57分
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14pt
評価ポイント
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文字数
6,199文字
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