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レインボーインパルス

短編
あらすじ
「……レインボーインパルスを飛ばそう」

 首相官邸の会議室。テーブルに肘をついて、顔の前で手を組んだ首相が静かにそう提案した。ブラインドカーテンから漏れ入る光が眼鏡に反射している。
 総理の言葉に一同波打ったように身じろぎや咳払いをし、やがて「それしかありませんな」「やむを得ない」「ううむ」と老齢の議員らが唸った。その中、比較的若い議員が目を瞬かせて「え、レインボー……?」と呟いた。

「なんだね?」と、その彼の隣に座る議員が眉を上げ訊ねた。

「いやあの、ブルーインパルスならわかるのですが、レインボーインパルスとは……」

「ああ、知らないのか」

 暗い会議室に、ほのかな笑いが広がった。彼は恥ずかしさで顔を熱くしたが、この重苦しい空気を少し緩和することができたことを喜ばしく思い「へへっ、すみません」と笑みを浮かべ、無知な若者という役割を受け入れた。

「まず、ブルーインパルスが何か知っているね?」

「はい。航空自衛隊のPRのためのチームで、アクロバティック飛行でイベントを盛り上げていますよね。以前、新型ウイルスが流行した時に、対応に追われ疲弊する医療関係者にエールを送るために飛んだとか。ああ、あと地震の被災地にも飛んだはず。まあ、自分は医療従事者でも被災者でもないので、飛行機が飛んだくらいで喜ぶのかな、と思いましたけど、あ、すみません」
Nコード
N7554JH
作者名
雉白書屋
キーワード
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ジャンル
ヒューマンドラマ〔文芸〕
掲載日
2024年 07月29日 15時00分
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