- あらすじ
- 四〇年後に地上で死ぬ空中勤務者
俺は今、倒れたな。
平衡感覚を無くして、ふっと体の力が抜けた。立っていられなくなったのは、分かった。目の前が暗くなった。そして、倒れた。
左の頬を濡らしているのは、俺の血だろうか。生暖かい。べたつく感じだ。血の臭い。
戦場でもこれ程間近で、血の臭いを嗅いだことは無かった。臭い血だ。血の下の床は、頬に冷たい。
倒れるとき、手で体をかばっただろうか。多分できなかった。頭を床にぶつけた音を、聞いた気がする。頭にもどこにもほとんど痛みを感じないのは、かえって相当ひどい状態なのだろうか。
戦場には、痛くて泣き叫ぶ奴がいた。痛さに、必死に耐えている奴もいた。痛がることさえできない奴は、直ぐ死んでいった。
だるい。体のどこにも力が入らない。手も足も動かせない。どこも痛くはないが、息苦しい。俺は、このまま死ぬのか。
こんなものか、俺の死に様は。こんな幕引きが似合っているか。今更考えても、だな。
俺の人生の頂上は、九九双軽に乗っていたときか。同時に、戦争というどん底でもあったな。どん底の環境で人生の絶頂期、皮肉なのか、それとも、珍しくもないことなのか。人はどんな劣悪な環境にあっても、その中で最高の瞬間を得られるものなのかも知れない。
- Nコード
- N6111LJ
- 作者名
- 宮澤史郎
- キーワード
- キーワードが設定されていません
- ジャンル
- 純文学〔文芸〕
- 掲載日
- 2025年 11月18日 13時32分
- 感想
- 0件
- レビュー
- 0件
- ブックマーク登録
- 0件
- 総合評価
- 0pt
- 評価ポイント
- 0pt
- 感想受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - レビュー受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - 誤字報告受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - 開示設定
- 開示中
- 文字数
- 62,096文字
設定
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悲しいほどに純粋な者たちや美しいほどに愚かな者たち 1/2
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから
同一作者の作品
N6115LJ|
作品情報|
短編|
純文学〔文芸〕
九九式双軽操縦者、永友美博曹長
昭和二〇年二月、帝国陸軍、第四航空軍、第七飛行師団、第三飛行団、飛行第七十五戦隊、第三中隊、永友曹長はフィリピンから帰還した。とうとう乗る飛行機が無くなり、内地に取りに来たのだ。本当は昨年//
N6111LJ|
作品情報|
短編|
純文学〔文芸〕
四〇年後に地上で死ぬ空中勤務者
俺は今、倒れたな。
平衡感覚を無くして、ふっと体の力が抜けた。立っていられなくなったのは、分かった。目の前が暗くなった。そして、倒れた。
左の頬を濡らしているのは、俺の血だろうか。生暖かい//
N6098LJ|
作品情報|
短編|
純文学〔文芸〕
真珠湾奇襲攻撃を忘れるな!
しかし、ヒロシマとナガサキでは充分ではないのか?
1940年8月6日、ヒロシマ、ウラニウム型原爆で15万人が殺された。
3日後、ナガサキ、プルトニウム型原爆で8万人が殺された。
78年に亘る//
N6092LJ|
作品情報|
短編|
純文学〔文芸〕
4/29/23
職業や様々の事情によりその恩恵を受けられない人々も多いと思うが、世は今日がG/Wの始まり。
祖父の誕生日である天皇誕生日が父の代にみどりの日となり、さらには昭和の日という呼び名になった。
国民にとっては、//
N6701LI|
作品情報|
短編|
純文学〔文芸〕
殺さないようにします。そのために調査をして、準備をしてきました。それでも、確実に死なないとまでは保証できません。あなたの運が良ければ死ねるでしょうし、運が悪ければ廃人として生き残らなければなりません。私はできるだけ精一杯//
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。