- あらすじ
- 野上繭、二十九歳。東京の安アパートに暮らす、どこにでもいる女。
三年間、彼女は藤堂勲の世話をし続けた。七十二歳の元官僚。亡き妻への一途な愛を守り続け、清廉潔白と評判の老人。週刊誌は彼を「昭和最後の紳士」と書き、近隣の老人たちは彼を「聖人」と呼んだ。
繭だけが、知っていた。
あの善意の底に、何があるかを。
藤堂の慈悲は美しかった。しかしその美しさは、繭を永遠に「哀れな弱者」という檻へ閉じ込めるための、世界で最も洗練された暴力だった。彼は繭を、自分と同じ人間として一度も見たことがなかった。
だから繭は、計画を立てた。
藤堂が守り続けた清廉なキャリアを、性的異常者の末路に書き換えること。亡き妻への純愛を、偽善の仮面として暴くこと。「聖人」の死体を、汚泥の底に丁寧に沈めること。
共犯者は小川。同じ施設に出入りする、欲望を隠す気もない中年女。繭は彼女を利用しながら、自分が少しずつ小川と「同じ肉塊」になってゆくことに、気づかないふりをし続けた。
そして藤堂勲は、死んだ。
復讐は、完成した。
しかし野上繭の内側にある重くて粘ついた「何か」は、一グラムも減っていなかった。夢の中では、老人がいつも同じ姿で現れる。血も涙も流さず、ただ穏やかに微笑んで、繭を見つめるだけの幽霊が。
怪物は、どちらだったのか。
天使は、最初からどこにいたのか。
悪女の内側を描いた心理サスペンス。全四章・短編。 - Nコード
- N5607LV
- 作者名
- はまゆう
- キーワード
- 残酷な描写あり シリアス 女主人公 和風 現代 バッドエンド 犯罪心理 心理描写 憎悪 殺人 サスペンス 東京
- ジャンル
- 純文学〔文芸〕
- 掲載日
- 2026年 02月25日 23時36分
- 最新掲載日
- 2026年 02月27日 15時06分
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- 文字数
- 19,324文字
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汚泥の天使
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