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月夜の湖

短編
あらすじ
母と二人で暮らす少年・カンタは、夜もひとり過ごすことに慣れていた。

ある風のない静かな晩、彼は空にぽっかり浮かぶ満月を見つけ、誘われるように湖へ向かう。

湖畔には、古びた木の舟があった。
母がかつて歌ってくれた子守唄の一節「ぽっかり月が出ましたら、舟を浮かべて出かけましょう」を口ずさみながら、カンタは舟を湖へ浮かべ、波にまかせて静かに進む。

水の音、遠くの鳥の声、夜の寂しさ。
それらすべてを受け入れながら舟に揺られていると、湖の上にもう一艘、白い服を着た少女の乗る舟がふわりと現れる。

少女は何も言わず、ただ微笑み、そっと釣り糸を垂らす。
やがて彼女は、「お月さんが出ましたら、のんびり釣りでもいたしましょう」と語る。
それは、母の子守唄の続きを思わせる、やさしい響きだった。

二つの舟は並んで湖に浮かび、月光に照らされながら、静かな時間を過ごす。
夜が明けかけたころ、少女の舟は音もなく霧のなかに消えていった。

その朝、カンタは寂しさを感じていなかった。
銀色の魚が一匹、水面で跳ねていた。

それから彼は、満月の夜にだけ舟を出し、夜を過ごすようになった
Nコード
N5375KO
作者名
コバヤシ
キーワード
ほのぼの 和風
ジャンル
童話〔その他〕
掲載日
2025年 06月02日 22時35分
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