- あらすじ
- 視界は真っ白な光に包まれている。
まぶしい。目を閉じたいが、閉じられない。
(安全な緑内障の手術って看護師さん話してなかった?)
瞼(まぶた)は冷たい金属製の開瞼器(かいけんき)で、強制的に固定されているからだ。
男の声(黒幕)
「素晴らしい……。適合率は99.8%。やはり君の視神経は、人類という種の限界を超えている」
身動きが取れない。手足は革のベルトで手術台に拘束されている。
麻酔は効いているはずなのに、目の奥で「何か」が蠢(うごめ)く感覚だけは鮮明だ。
熱い。脳みそに直接、焼き鏝(ごて)を当てられているような熱さ。
(やめろ……)
声を出そうとするが、喉からはヒューヒューという掠れた音しか出ない。
視界の中で、マスクをした男が覗き込んでくる。
逆光で顔は見えない。ただ、その眼鏡の奥の瞳だけが、冷酷に笑っているのが分かる。
「神は人間に『光』を与えたが、私は君に『真実』を与えよう。……この眼は、世界の全てを暴く。嘘も、病も、死さえもね」
キュイィィィン……
針が、瞳の角膜を貫く。
激痛はない。
脳が焼き切れるほ感覚を覚える。
(殺す……! 俺をこんな姿にしたお前を……絶対に……!)
(貴様を見つけ出し……そのふざけた目をえぐり出してやる……!)
「開眼せよ。……アスクレピオスの愛し子よ」
視界が真っ赤に染まり、意識が断絶する。
「あがぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
右手に握られているのは、鋼鉄製のハンドグリップ。
極限まで握り込まれたスプリングが、限界を超えて軋んでいる。
ギチ……ギチチ……
男は、悪夢を見ていた。
数年経った今でも、眼球の奥に残る「幻痛」が、彼をあの日へ引き戻す。
湧き上がる破壊衝動。
それを抑え込むように、彼はただひたすら、ハンドグリップを握り潰す。
???
(事務員の声)「……眼圧が上がっておりますよ。また『悪い夢』ですか?」
男はハッとして顔を上げる。
そこには、湯気の立つティーカップを持った初老の事務員が立っていた。
男はゆっくりと息を吐き出し、ハンドグリップをテーブルに放り投げる。
ゴトン。
重厚な音が、彼を現実へ引き戻す。
男は、テーブルに置いてあった遮光サングラスを手に取り、慣れた手つきで装着する。
レンズが瞳を隠した瞬間、苦悶の表情は消え去り、いつもの傲慢で不敵な「仮面」が張り付く。
「……フン。夢ではないさ。あれは『予約表』だ。」 - Nコード
- N5369LK
- 作者名
- TEKA
- キーワード
- 現代
- ジャンル
- コメディー〔文芸〕
- 掲載日
- 2025年 11月26日 16時02分
- 最新掲載日
- 2025年 11月26日 16時02分
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