ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

書評集 蔦を這わせる

あらすじ
 書評というのは、作品に一本の糸を通すようなものだと私は感じています。それがよいものであるかどうかは、ひとまずのところ問題ではありません。どんな形であれ、そこに糸が通うということ自体が作品の持つ奥行きや豊かさを、結果として浮かび上がらせることになるからです。

 私は本来、自分の言葉なり表現というものを持たない側の人間ですが、そういう誰かの言葉や表現に蔦を這わせることでしか文章を綴れない人間が、こうした場で居を設けることは相応しくないと言ったら、否定してくださる方はおそらくいらっしゃることでしょう。というのも、小説に関する場である限り、ここには書かない人間がいるとしても、読まない人間はいないからです。そして、自分の小説を好きに書くことで自分を満たす以外に、この場に私が居合わせる意味があるのだとしたら、読み手として振る舞うことの可能性を示すくらいしか、私には思い当たることがありません。

 誰もが表現に向かうことのできる場というのは掛け値なく素晴らしいものですが、ひとりの人間の受容性を遥かに凌駕する物量の作品が今この瞬間も生まれていることを思うと、他人の文章について私たちが持ち合わせている警戒心、このどうしようもなく冷静に作品を峻別してしまう私たちの眼差しには、確かな正当性があるとも言わなければなりません。これは誰の責でもない、それぞれが読み手として勝ち得た私たちの立派な能力なのですから。
 ですが、叶うのなら私はそういうものを崩してみたい。この眼差しに耐えられるものだけが私にとって読まれるべき優れた作品ではないということを、私の持てるすべてを使って示してみたい。私の構えを解き、躓かせ、膝をつかせたその先で、私の目がとりこぼしてきたものを優しく掬い上げる新しい作品があることを、私自身が知らないままにこの人生を終えたくない。今はただ、そういう気持ちでやってみようと思っています。これを読まれる若い方に肩を並べられるだけの熱量を私が持ち合わせているとしたら、おそらくこの一点に限ってでしょう。

 この書評がどれだけ続けられるとしても、それは最後まで作品性というものをひとかけも持たない文章の羅列になるでしょう。そしてそういうものを、私は誰に恥じるでもなく平然と続けていくつもりです。それだけが私が自分を許すことのできる、誰にも奪うことのできないものだと、そう信じているからです。
Nコード
N4609IH
作者名
みかげ石
キーワード
書評
ジャンル
エッセイ〔その他〕
掲載日
2023年 07月02日 09時13分
最新掲載日
2023年 07月02日 09時20分
感想
0件
レビュー
0件
ブックマーク登録
0件
総合評価
0pt
評価ポイント
0pt
感想受付
受け付ける
※ログイン必須
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
15,246文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N4609IH| 作品情報| 連載(全3エピソード) | エッセイ〔その他〕
 書評というのは、作品に一本の糸を通すようなものだと私は感じています。それがよいものであるかどうかは、ひとまずのところ問題ではありません。どんな形であれ、そこに糸が通うということ自体が作品の持つ奥行きや豊かさを、結果とし//
N3521IG| 作品情報| 短編| エッセイ〔その他〕
 備忘録がてら、日々の中で読んだ本の感想を書いています。  こうして取り上げるからには、誰かに読んでもらいたいと思えるものを扱いたいですし、「なろう」の作品についても、気に入ったものを取り上げていきたいと思っています。 //
N3497IG| 作品情報| 短編| エッセイ〔その他〕
備忘録がてら、日々の中で読んだ本の感想を書いています。  こうして取り上げるからには、誰かに読んでもらいたいと思えるものを扱いたいですし、「なろう」の作品についても、気に入ったものを取り上げていきたいと思っています。  //
N3493IG| 作品情報| 短編| エッセイ〔その他〕
 備忘録がてら、日々の中で読んだ本の感想を書いています。  こうして取り上げるからには、誰かに読んでもらいたいと思えるものを扱いたいですし、「なろう」の作品についても、気に入ったものを取り上げていきたいと思っています。 //
N7973ID| 作品情報| 連載(全27エピソード) | ハイファンタジー〔ファンタジー〕
 一度人類が滅んだあとに再び創られた世界において、家出をした少女が仲間と出会い、旅を通じて自らを見つめなおす物語、になると思います。  少女の名前はフラン。神々にも伍する力を期せず与えられたことに戸惑い、また養父との確執//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ