- あらすじ
- 「探偵小説」は、本質的に「欠陥」を含んでいる。
ここで言う「欠陥」とは、「探偵小説」が探偵小説たるために不可欠であるにも拘らず、それの真の完成を最後の時点で決定的に阻む「躓きの石」としても機能するという意味で、非常に逆説的な一要素のことを指している。そしてその所謂「アポリア」の淵源は、結局のところ、「探偵小説」が「モノローグ」でしかありえないというところにこそ求められる。「探偵」が情報を集め、推理を進め、徐々に謎を解き明かし、最後にようやくたどり着くはずの「真相」は、実際には「探偵」が情報を集めるより前から既に「作者」(≠語り手/現実に生きて、動いている人物としての作者)によって作中に内蔵されていなければならない。つまり「探偵」は一見どれだけ活躍しているように見えようとも、結局敷かれたレールの上を行ったり来たりしているだけにすぎず、だからこそ「探偵小説」はその系列の正統な嫡子であることを目指す限り、実際には超越的な立場に安住し、高みの見物を決め込む「作者」渾身の、自己満足的に脚色された「事件の報告書」にしかなり得ない。要するに、そういうことだ。
だから翻って考えれば、今ここに語り出されようとしている「物語」は、「探偵小説」に対する「絶対的な《他者》」たることこそが求められている。「探偵小説」としてある限り、決して逃れることのできないくだんの「アポリア」をいかにして超克するか、そのことについて答え=実践がこの「物語」なのである。
とは言え、広大な電脳空間上の一スペースをお借りしたうえでただ単に「探偵小説」がどうたらこうたらとかいう極めてニッチすぎる「お喋り」にのみ延々終始するのは、どう考えてもそれ自体があまりに自己満足的に過ぎている。それゆえ「物語」に仮託する形で為された試論、及びそれにより得られたわずかばかりの知見は、ゆくゆくはより大きな問題へと敷衍されていかなければならない。つまり概括すれば、ある種の普遍的な「出口なし」状況(≒閉塞、八方ふさがり、袋小路、牢獄、etc.)からの脱却、それが本「物語」の真の眼目である。……お分かり、いただけただろうか……?
- Nコード
- N4497KU
- 作者名
- 速水アオイ
- キーワード
- ダーク 現代 職業もの ハードボイルド 私小説 探偵小説 怪談 スパイ ヤバい。
- ジャンル
- 推理〔文芸〕
- 掲載日
- 2025年 08月15日 20時20分
- 最新掲載日
- 2025年 10月03日 02時04分
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- 文字数
- 68,407文字
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