短編
- あらすじ
- あらすじ。
おれは高校を卒業して、病院の看護助手として就職した。そこは入院したら最後、亡くなるだけだと噂される療養病院だった。おれは見舞いに来ていた入院患者Kさんの娘・かすみと知り合う。彼女は悩んでいた。
「父は言葉を発さず、動くこともない。ただ眠って命をつないでいるだけ。回復することはあるのか」「母にこれ以上の負担をかけないために、大学進学をやめるべきじゃないのか」と。
おれは、かすみのために何か出来ることをしようとする。仕事でKさんを清拭する機会があった。清拭を終えたとき、「ありがとう」と聞こえた気がした。おれはKさんが声を出したと思って、かすみに伝える。喜んでくれると思って。だけど、反対に泣かれてしまう。「わたしが父のことを相談したから気を使わせて、まるで奇跡が起こることを期待させたみたい」と。おれはかける言葉を失ってしまう。
かすみに連絡できないまま時間が流れる。おれは仕事にも慣れたある日、病院の事務長から「病院に勤めながら看護学校に行かないか」と誘われ、受験をしようと決める。
「看護師になるつもりだ」と、かすみに伝えたら喜んでくれた。おれとかすみは花火を見に行く。かすみは将来のことを心配している。何もかもうまくいかない気がすると弱音を吐く。おれは「お父さんが経験できないことを、きみがすればいい。楽しいこと、うつくしいこと、たくさん経験すればいい」と伝える。そうすることが、Kさんが望んでいることだと。
おれの話を聞いて、大学へ行く意欲を失っていたかすみは「希望どおり、県外の大学に行こうと思います」と、前向きになる。もし大学へ行くことになったら、いま住んでいる土地を離れなければならない。
「県外の大学に行って遠く離れても、また会えますか?」と、かすみはきく。
「もちろん会える。おれはどこにも行かない」
「もし、わたしが帰ってこなかったら?」
「迎えに行く」
おれがこたえると、かすみは笑う。
「あなたといると、わたしにも楽しいこと、きっとある気がする」
おれは手を伸ばして、かすみの手を握る。そして、ふたりで歩み始める。
- Nコード
- N4410EJ
- 作者名
- よし
- キーワード
- 残酷な描写あり 青春
- ジャンル
- ヒューマンドラマ〔文芸〕
- 掲載日
- 2017年 11月10日 10時14分
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