ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

たんぽぽの咲く土手

短編
あらすじ
『サークル・シエスタ』第三回短編課題 「再会」
 参加作の3 「タンポポの咲く土手」
 意見交換会でいただいた助言を参考に、改稿しました。


 全国から桜の便りが届く頃、山あいの里ではまだ春の予兆が顕れたばかり。とはいっても、今を盛りと咲き誇る桜も良いが、自然が見せてくれる風景ほど魅力的なものはない。
 山から木を移植しただけの素人庭でしかないが、間近の山を背景にとりいれた庭は、父の部屋の正面にあった。そこはまた、鐵道に生涯をかけた父にとって憩いの場でもある。
 里で戯れる風を見、さまざまな姿をみせる雨を愛で、遠く近く列車の鼓動を聞くことが楽しみなのだ。

 山里にも春が訪れ、衆目を集める花が散ると、野の花が控えめに己を誇示する。それに誘われて散歩に出た父は、無人駅のホームで枕木に目をやっていた。
 うららかな陽気は追憶の扉を開き、父はそこで元気いっぱい駆け回っていた。

 騒々しい音とともに出現した列車は、父がハンドルを握った車両だった。思いがけない再開に、父は吸い寄せられるように乗り込み、現役でハンドルを握っているかのように澱みない操作を繰り返している。

 不意に父が前方を示した。
 懐かしい車両に出会えた父を称えるつもりか、土手で見送るものがいた。
Nコード
N4139DI
シリーズ
サークル・シエスタ課題
作者名
齋藤 一明
キーワード
サークル・シエスタ 再会 山里 運転士 音 懐古
ジャンル
純文学〔文芸〕
掲載日
2016年 06月02日 08時07分
最終更新日
2016年 08月22日 22時57分
感想
9件
レビュー
0件
ブックマーク登録
11件
総合評価
100pt
評価ポイント
78pt
感想受付
受け付ける
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付けない
開示設定
開示中
文字数
7,652文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N5856GJ| 作品情報| 完結済(全3エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
名古屋の老舗繊維商社に勤める水島は、愛煙家だ。ただ、現代は愛煙家が肩身をせまくしている。家を出た瞬間から帰宅するまで禁煙を強いられるのに憤っていた。そんな折、会社の近くに喫煙喫茶ができ、常連となった。その店には糸香という//
N8759FF| 作品情報| 短編| 純文学〔文芸〕
私、準ミスに選ばれてしまいました。 いろんなところに引っ張り出されましたが、こんなこともありました。
N0526FE| 作品情報| 完結済(全10エピソード) | 歴史〔文芸〕
 姫路で施療院を営む越前屋仁平は、領主であった松平家が豊後の日田へ転封となった際に、新たに押しかけ妾を受け入れてしまった。妾の名は富永(とみなが)絢女(あやめ)。松平家上(かみ)女中(じょちゅう)である。足軽の娘だった絢//
N3563EY| 作品情報| 短編| 純文学〔文芸〕
「おひや、いらんかえーー」「お冷や、どうどすーー」 京都の町に間延びした売り声が流れた。盆の期間限定で出現する白川女(しらかわめ)の一団だ。 何事だろうと人が振り返った。手甲脚絆に草履履き、紺の筒袖も被った手拭いも時代錯//
N9637EU| 作品情報| 完結済(全5エピソード) | 純文学〔文芸〕
 冬の荒れた浜で、女は行き倒れの武士を拾った。男の綿入れ欲しさにネグラに連れ帰ったのだが、その顔をマジマジと見て女は後悔した。自分を仇と追っている夫だったのだ。  捨てに行こうにも体調が悪く、仕方なく女は男をネグラに運び//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ