- あらすじ
- ぬいぐるみ専門の小さな病院で、蒼介は祖母の手元を見つめている。
運び込まれてくるのは、綿が潰れ、縫い目がほつれ、それでも手放されなかったぬいぐるみたち。祖母はその腹を静かに開き、灰色に固まった綿を取り出す。けれど、すべてを捨てるわけではない。潰れた綿を丸め、新しい白で包み、もう一度戻す。そして、縫い目はあえて残す。
「元通り」にはしない。
それは、抱きしめ愛しんだ跡を消さないためだという。
一方で、蒼介の母は外科医として人の身体を切る。悪いものは取り除く。それが正しさであり、救うということだ。
切除と修復。
取り去ることと、残すこと。
どちらも誰かを思っての選択だと知りながら、蒼介の心は揺れる。
やがて彼は、自分の手でカルテを記す。
そこに書き添えたのは、「傷あと:良好。」という一文だった。
消さなかった跡の中に、失われなかった時間があるのなら。
治すとは何かを問いながら、ひとつの継承が静かに始まる。 - Nコード
- N4067LW
- 作者名
- 月森 いと
- キーワード
- ネトコン14 春チャレンジ2026 シリアス 男主人公 現代 職業もの 日常 青春 ぬいぐるみ 修復 継承 傷あと カルテ ライト文芸
- ジャンル
- 純文学〔文芸〕
- 掲載日
- 2026年 03月05日 09時53分
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- 文字数
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傷あとのカルテ ―元通り、ではなく―【思い出の傷あとを愛する、ぬいぐるみ専門病院】
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