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鈴の下駄

あらすじ
あらすじ

 大きな松の樹のある、小さな八幡社には、人好きで、いたずら好きな、怒ると怖い神さまが住んでいると云われています。
 人々は親しみを込めて、「御宮≪おみや≫さん」と呼んでいます。

 その御宮さんには、時折少しだけ風変わりな子供が現れます。
 まるで鈴の音のように、歩くたびにカラコロとよく鳴る下駄に、朱色の羽織。
 ぴょんぴょん跳ねた飴色の髪と、同じ色したどんぐりまなこ。

「ばかだなあ。きみが知らないから、ぼくが知っているのさ」

 傷を抱え、痛みを抱え、立ち止まってしまった人たちに、子供は生意気にそう言って、なんだか楽しげにわらいながら、ずっとそばにいるのです。
 春には迷子の女の子が、夏にはいじめられっこの少年が、秋には寂しげなお母さんが、冬には暖かな家族が。
 それぞれの傷と、痛みを抱えて御宮さんに訪れます。

 涙をこぼしたり、うつむいたり、生きている彼らに、神さまは何もしてはくれません。
 飴色の少年も、何もしてはくれないけれど、呆れも、わらいもしないで、ただただそばにいてくれます。
 泣いたらいいよ、と、そう言って、ただ、そばに。

 迷子の女の子は、やがて自分らしさを受け入れて恋をします。
 いじめられっ子の少年は、死ぬことなく大人になって、おじいちゃんになります。
 寂しげなお母さんは、小さな息子の幸せを願って、天国へ帰ります。
 暖かな家族は、いつかの迷子の女の子。

 季節を、時を経て、巡り巡る物語。

 彼らは飴色の少年に救われたというけれど、終わらない神さまの命のさびしさを癒してくれたのは、傷を抱えて生きる彼らで。

 だから、飴色の少年は、今日も嬉しそうにわらっています。

Nコード
N3607DK
作者名
水瀬透
キーワード
ほのぼの
ジャンル
童話〔その他〕
掲載日
2016年 07月11日 23時29分
最終掲載日
2016年 07月11日 23時59分
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文字数
29,045文字
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