ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

月下茶楼、まずは一服 巫女咲月と点心職人の恋帳

あらすじ
 春の終わりの夜。山あいの城下町「月代」の稲荷社で、社務所の明かりを落とした咲月は、裏鳥居の先から甘い湯気の匂いを嗅ぐ。そこに立っていたのは、昨夜まで無かった朱塗りの茶楼――「月下茶楼」。卓の向こうで湯呑みを差し出したのは、点心職人の蒼生だ。咲月の掌に戻ってきたムーンストーンが淡く光り、霧の奥の城下「龍城」と月代の境目がずれ始めていると、蒼生は静かに告げる。
 祓い札を握る咲月は、怒る暇もなく餃子を勧められ、月餅と団子を食べ比べさせられ、霧の石畳で迷子犬を追いかけ、雨の夜には雑巾を奪われて指先を温められる。口が悪い屋台の仁愛は「腹が減ると帰りたくなるぞ」と怒鳴り、段取り命の乙女は案内板に「月代側へ」「龍城側へ」と矢印を増やし、最後にでかでかと「まずは一服」と書き足して笑わせる。仁愛は「叱る声があると客が安心する」と勝手に持ち上げ、咲月は眉を上げながらも、茶楼を守る手が止まらない。帳簿を「明日こそ」と挟み続けた咲月は、帳面みたいに気持ちを後ろへ挟む癖をほどき、泣きそうなときほど先に言う練習を重ねる。
 蒼生は火傷を隠し、八角の香りを加減し、獅子頭を抱えて秋祭りの夜に境目を押し戻す。割れた石の欠片を合わせたとき、ひびは消えず、青白い筋と朱い筋が並んで光る――二つの街が同じ月を映す印だ。咲月は「見送るのが嫌い。離さない」と言い、蒼生は「帰ると言葉を盾にして逃げていた」と吐く。ふたりは茶楼を“間”に祀り、帰る場所ではなく会える場所にすると誓う。
 満月の橋が薄れても、炉の火は沈まない。紅葉の残る朝、咲月は帳面を閉じ切り、桂花の香る点心を齧って「好きだよ」と今日言う。龍城の客とは甘酒の搾り粕を交換する約束を結び、子どもたちの「二つとも好き!」に胸を温める。湯気の向こうで「ただいま」「おかえり」が重なり、和と中華が重なる屋根の下、夫婦茶楼は月代と龍城の灯をあたため続ける。
Nコード
N3546LT
作者名
乾為天女
キーワード
ネトコン14 和風中華 異界茶楼 巫女ヒロイン 点心とお茶 ほっこり泣ける 秋祭り すれ違い恋愛 恋愛部門和風中華
ジャンル
異世界〔恋愛〕
掲載日
2026年 02月08日 15時10分
最新掲載日
2026年 02月16日 15時10分
感想
0件
レビュー
0件
ブックマーク登録
1件
総合評価
2pt
評価ポイント
0pt
感想受付
受け付ける
※ログイン必須
レビュー受付
受け付ける
※ログイン必須
誤字報告受付
受け付ける
※ログイン必須
開示設定
開示中
文字数
31,844文字
作品を読む
スマートフォンで読みたい方はQRコードから

同一作者の作品

N3813LR| 作品情報| 連載(全29エピソード) | ローファンタジー〔ファンタジー〕
 塩の匂いが漂う港町から、辺境の開拓地「沢山咸」へ――。人々の“語る力”が抜け落ち、昔話も日記も、笑い話さえ紙から薄れていく世界で、瑛大は点呼のたびに同じ合図を繰り返す。「今日も名前を呼ぶ。返事があるだけで、俺は助かる」//
N4815LT| 作品情報| 連載(全11エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
 2026年4月、東京都下町の花川商店街。就職に失敗して自信をなくしかけた穂花は、空き店舗のシャッターに貼られた手書きのチラシ「何でも屋 手伝います」を拾う。電話の主・櫂は「捨てていい」とぶっきらぼうなのに、困りごとを前//
N4423LT| 作品情報| 連載(全11エピソード) | 現実世界〔恋愛〕
 七月下旬、東京の汐留寄りにある広告制作会社で働くプランナー咲希は、駅前商店街に新規出店するカフェチェーンの「夏限定ドリンク」販促を任される。初回打ち合わせで現れた取引先の開発担当・叶空は、紙ナプキンに「暑さをしのぐ技教//
N6042LR| 作品情報| 連載(全26エピソード) | ローファンタジー〔ファンタジー〕
 冬の異世界・黄晶都。言葉が魔力の導線となり、薄い紙の魔具「札」に文章を書くと場の空気が変わる街で、地球から来た志音は裏路地で目覚める。腹を鳴らして入った宿で掌に浮いた「レビュー札」を使い、短い感想で酒場の喧嘩を止めたと//
N5546LT| 作品情報| 連載(全10エピソード) | ヒューマンドラマ〔文芸〕
 3月下旬、地方都市の椿坂商店街。魚屋と和菓子屋が「甘い」「塩辛い」で口げんかを始め、周りが煽りかけた瞬間、惣菜店の息子・晴翔は割って入らず試食皿を二人の間に置く。「口より先に食べよう」。その直後、学習室(元・市立図書館//
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ