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波の間に間に

短編
あらすじ
電車は、まだ来ない。

旅人は、日本海を望む小さな駅の待合室で時間を持て余していた。
壁際の古びた本棚に、背表紙の擦れた一冊の詩集がある。
なにか特別な気がして、旅人はそれを手に取った。

ページを開いた瞬間、一枚の手紙がふわりとこぼれ落ちる。
和紙のような紙は黄ばみ、折り目は薄く裂けかけていた。
ところどころインクが掠れ、いくつもの言葉が黒く塗りつぶされている。

手紙は、どこか遠くへ旅立ってしまった愛する人へ宛てたものだった。
満州の風景を感じさせる遠回しな言葉。
珈琲の香り、夕暮れの街角、秋の風の記憶。
そして最後の一文——それは滲んで読めなかった。

旅人は静かに手紙を戻し、ふと詩集の頁をめくる。
そこには、一篇の詩が書かれていた。

「たとえ遠くても、君の影はこの頁にいる。」

旅人は、詩集をそっと本棚に戻す。
夜の海は暗く、波は静かだった。
遠くで、電車の音が微かに響いた——。
Nコード
N3446KF
作者名
かれら
キーワード
書簡体小説 海 別れ 手紙 想い
ジャンル
純文学〔文芸〕
掲載日
2025年 03月15日 16時14分
最終更新日
2025年 03月15日 17時28分
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文字数
2,515文字
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