- あらすじ
- 意識が戻ると、そこは見知らぬ書庫であった。かの哲学者ガストン・バシュラールと、科学史家ロレイン・ダストンは、こうして異世界に相見えたのである。二人の間に横たわるは、一つ、奇妙な果実。これを「マールス」と名付け、さて、どう食すべきか。
「火を以て、その夢を解き放つべし」と語るバシュラール。彼の言葉は詩のようであり、錬金術のようでもある。
「否、ありのままを記述し、客観の礎とすべし」と返すダストン。その眼差しは、冷徹な分析の光を宿している。
生食か、加熱か。主観か、客観か。二つの知性は、厨房というささやかな舞台の上で、互いの信じる全てを賭けて、激しく火花を散らす。歴史の書物は沈黙し、頼るべき規範もない。ただ、自らの知のみを武器として、彼らは実践の場へと赴くのであった。
火の夢想が生み出した琥珀色のジャム。客観的実験が生み出した二様のソース。その味は、その香りは、果たして言葉の網で捉えきれるものなのか。闘争が極まったそのとき、ふと現れた一人の老婆が、彼らの狭い二元論を、こともなげに打ち砕いていく。
これは、知性の巨人二人が、見知らぬ世界で一つの果実を前に、自らの学問的生涯の全てを賭して繰り広げる、厨房の形而上学を巡る、静かで、しかし、どこまでも烈しい物語である。 - Nコード
- N2847KT
- 作者名
- モーレツ!モーレス!!
- キーワード
- キーワードが設定されていません
- ジャンル
- その他〔その他〕
- 掲載日
- 2025年 07月11日 19時27分
- 最新掲載日
- 2025年 07月11日 19時42分
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- 開示設定
- 検索除外中
- 文字数
- 22,842文字
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厨房の形而上学
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N2891KT|
作品情報|
完結済(全12エピソード)
|
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
現代日本で過労死した青年・佐藤明人は、異世界で辺境貴族の末子カイト・アルビオンとして転生する。彼は前世の知識を活かし、寂れた領地を次々と改革。農業技術や法制度を整備し、領地を豊かにしていく。彼は自らを、差別や偏見を持たな//
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