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猫のおまじない〜社畜が3日間に猫になった結果〜

短編
あらすじ
あらすじ

過酷な残業を終えた社畜のレンは、深夜の路地裏で不思議な喫茶店「またたび」を見つける。店主の美青年に勧められた「特別なコーヒー」を飲んだ瞬間、意識を失い、目覚めると三毛猫に変身していた。

店主は黒猫・ダリルの姿で現れ、「3日間だけ猫として過ごしなさい」と告げる。レンはダリルの飼い主である優しい女性・ハナの家で、初めて味わう「撫でられる幸せ」「ご飯を待つだけの時間」「陽だまりで寝るだけの贅沢」に溺れていく。人間時代には決して得られなかった「ただいま」という言葉と、頭を撫でられる温もりに、心が溶けていく。

しかし3日目、ハナの疲れた横顔と、ふとした瞬間に見せる寂しさに気づき始める。同時に人間時代の辛い記憶がフラッシュバックし、レンは「このまま猫でいるのは逃げだ」と決意。ダリルに頼み込み、人間に戻してもらう。

人間に戻ったレンが再び店を訪ねると、店主はハナ本人で、ダリルはただの猫に戻っていた。偶然を装いコーヒーを注文するが、ハナが過労で倒れ、病院に運ばれる。ハナの伯母から語られた過去――母親の虐待、16歳からのヤングケアラー生活、認知症の父を一人で看病し、2年前に父を亡くして以来、休みなく店を守り続けてきた孤独――を知り、レンは衝撃を受ける。

猫だった3日間、自分はハナの涙を見ずに甘えていただけだった。

レンは会社を辞め、ハナの店を手伝うことを決意。「猫の恩返しです」と告げると、ハナは初めて本当の笑顔を見せる。二人は一緒に店を切り盛りし始める。

ある朝、看板猫となったダリルの瞳に、朝日が差し込む。そこに浮かんだのは、ハナの亡き父の姿だった。父はかつての店主であり、死後も猫の姿で娘を見守り、疲れたレンを猫に変えてハナの元へ導いたのだ。

「ハナを……頼むよ」

父の姿は光の中に溶け、ダリルはただの猫として丸くなる。

レンは今日もハナと並んでコーヒーを淹れる。

「おいしさは病みつきになりますよ。またたびのように」

疲れた誰かが扉を開けたら、また新しい物語が始まる――そんな優しい香りが、店内に満ちていた。
Nコード
N1987LK
シリーズ
猫小説 短編集
作者名
雲晴 莉叶
キーワード
秋の文芸展2025 ほのぼの 現代 パラレルワールド 猫
ジャンル
純文学〔文芸〕
掲載日
2025年 11月23日 15時14分
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文字数
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