- あらすじ
- 領主は日々、夢を見る。自身が変じた蛇の夢だ。
屋敷の寝台の中から這い出て、窓をすり抜け、領地を離れた山へ向かう。辿り着くのは決まって一本の木に作られた鳥の巣で、蛇は中の卵を親鳥代わりに温めていた。
婚姻を前に令嬢が輿入れをする日の朝もその夢を見た。蛇が抜け出る窓の向こう、南の山嶺の彼方から従者たちを引き連れ訪れる。可憐な少女から美姫へと成長した令嬢を迎えて、ようやくその由来を知れた。幼かった令嬢とはじめてまみえた、南の国の庭園だった。
前祝いを兼ねた晩餐の後寝室を訪れる。2人きりになった部屋で10年ぶりの対話を楽しむが、ふと令嬢の雰囲気が変わったことに気づいた。かつての幼さの片鱗を脱ぎ捨て寝台の上で待ちわびる姿はまさしく妻としてもので、その視線は夢に見ていた蛇が卵へ向けていた視線と同じであった。
領主は誘われるままに褥へ入り、一昼夜をかけて肢体を絡めあった。
婚礼後まもなく、領主夫妻は第一子を授かった。さらに5人、6人と子宝に恵まれると、成長した子どもたちの助力で執政を盤石のものとした。
領主の名はやがて巻き起こった戦乱を平定し一国を築いた初代国王として伝わっている。
晩年まで国へ献身を捧げた王妃の葬儀には数多くの領民が嘆き悲しみ、長子へ地位を譲った領主は妻君の眠る生家で余生を過ごしたという。
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- Nコード
- N1935IR
- シリーズ
- 増やせて行けるといいなという三題噺
- 作者名
- 霧縛りの職工
- キーワード
- R15 年の差 ヒストリカル 時代小説 中世 男主人公 西洋 三題噺 蛇 窓 夢
- ジャンル
- ヒューマンドラマ〔文芸〕
- 掲載日
- 2024年 03月09日 18時00分
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- 総合評価
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- 2,867文字
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2人は糾える蛇の如く
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