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裏口の代償

短編
あらすじ
才能じゃ勝てない。だったら、裏口を探すしかないだろ――。

雑踏の中に立ち尽くすユウトは、若手トップスターとして輝く同期の俳優、シュンとの差に焦燥を募らせていた。子役時代から同じ道を歩んできたにも関わらず、自分だけが鳴かず飛ばずの日々。手のひらに滲む汗は、彼の無力さを物語っていた。

ある日、ユウトはシュンから薬物の調達を依頼される。「俳優って立場があるからさ。お前なら信用できる」。シュンに頼られたことで、ユウトの劣等感はわずかに薄れる。報酬としての金と、「今度のドラマ、監督にユウトのこと話しておくよ」という甘い言葉。ユウトは、この「汚れの仕事」こそが、シュンと対等になるための唯一の**「裏口」**だと信じ込んでしまう。

しかし、二人の秘密のやり取りを、別の同期俳優、ケントが知っていた。シュンに幾度となくオーディションで敗北し、その悪意のない同情の眼差しにプライドを粉々に砕かれてきたケントにとって、シュンの完璧なイメージを打ち砕くことが、唯一の復讐の原動力だった。

ケントは、ユウトと売人の接触を渋谷のスクランブル交差点で隠しカメラで克明に記録し、匿名でマスコミにリークした。すべてはケントの計画通りに進み、シュンとユウトはキャリアを一瞬で失う。ケントは「正義の告発者」として世間の称賛を浴び、シュンが降板した大作映画の主演に抜擢され、念願のトップスターの座を手に入れる。

だが、悪意は連鎖していた。

ケントがユウトを陥れるために売人と**「交渉」**している様子を、別のカメラが記録していたのだ。主演映画の初日舞台挨拶、スポットライトを浴びる最高の瞬間に、彼のスマホが震える。スクリーンに映し出されたのは、まぎれもない彼自身の醜悪な顔だった。「正義の告発者」は、「自作自演の犯罪者」へと変わる。彼の悪意は、皮肉な結末をもって彼自身を破壊した。

すべてを失ったケントが独り自らの愚かさを噛み締める一方、シュンとユウトは、ひっそりとボランティア活動を始めていた。埃をかぶった倉庫で、二人は黙々と段ボールを運ぶ。かつての虚ろな目はなく、そこには穏やかな輝きがあった。

悪意の連鎖が止まった場所で、彼は独り立ち尽くす。才能、嫉妬、復讐、そして再生――。人間の業を描くサスペンスドラマ。
Nコード
N1486LD
作者名
Tom Eny
キーワード
ESN大賞9 シリアス ダーク 男主人公 現代 職業もの 群像劇 日常 ハッピーエンド バッドエンド 青春 ハードボイルド サスペンス 嫉妬 芸能界
ジャンル
ヒューマンドラマ〔文芸〕
掲載日
2025年 09月26日 22時25分
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文字数
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