短編
- あらすじ
- 梅雨入りがすぐそこに迫った六月、水際小夜子(みぎわさよこ)は大学での講義を終えて、六義園(りくぎえん)の下見もかねて、駒込駅方面へ歩いて行く。
大手素材メーカーの数少ない女性研究者としてのキャリアを積んできて彼女は、50を過ぎた今年度から、大学で非常勤講師として講義を担当することになった。テーマは「女性のリーダーシップと企業文化」。子どものいない彼女は、大学で若者に接することで知的好奇心や母性本能をくすぐられていた。
駒込の駅前に、いかにも昭和という喫茶店があり、ディスプレイのチョコレートパフェとプリンアラモードに小夜子は心を奪われ中に入る。
店の中で、講義に出ていた学生に声をかけられた。彼は坂井と名乗った。彼女の授業の出席者は女子ばかりで、男子は数えるほどしかいない。男ばかりのなかでマイノリティの女子として学生時代を過ごしてきた小夜子は、坂井に良い印象を持っていた。
「先生に訊きたいことがある?」と言われて、小夜子は坂井と同じテーブルに座る。
坂井と話しているうちに、小夜子は納得する。自分が学生の頃は理系の女子がほとんどいなかった。だから、私は運よくここまで来れた。いまの学生たちが私と同じようなキャリアを歩もうと望むなら激しい競争が舞っている。留学をして箔をつける必要もある。でも、風俗で生活費を稼いでいる女子学生がいることはニュースで知っている。
坂井からは、彼女の講義の出席者の中にも風俗でバイトをしている女子はいるはずだし、こんな円安が続いてしまったら留学どころか海外で売春婦になる日本人が増えると言われてしまう。
坂井から手を握られて、小夜子はドキドキする。そして気がついた。
自分が学生の頃は、教授を夢中にさせて掌の上で転がす女子大生がいた。小夜子は彼女たちのようにはなれなかった。でも、あの頃若い学生の溺れた教授と同じことを今の自分がしようとしていることに……
- Nコード
- N1064IR
- 作者名
- jh
- キーワード
- 女主人公 昭和 平成 現代 職業もの 日常 青春 年の差 経済 格差 成功
- ジャンル
- ヒューマンドラマ〔文芸〕
- 掲載日
- 2024年 03月06日 21時36分
- 最終更新日
- 2024年 05月07日 22時32分
- 感想
- 0件
- レビュー
- 0件
- ブックマーク登録
- 1件
- 総合評価
- 20pt
- 評価ポイント
- 18pt
- 感想受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - レビュー受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - 誤字報告受付
- 受け付ける
※ログイン必須 - 開示設定
- 開示中
- 文字数
- 8,774文字