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月は綺麗ですね

短編
あらすじ
 ――月は綺麗だね。

 彼がその言葉を口にした瞬間、ドキッとして、あたしは何も言葉が出てこなかった。

『どうしたの? ぼーっとして』

「え、あ、ううん。その、あなたのこと想ってて……って、いや、あはは、あたし、何言ってるんだろ、あはは……」

『ふふっ、想っているなんて、まるで遠くにいるみたいだね。目の前にいるのに』

「あはは、それはそうだけど……でも、やっぱり遠いよ」

 あたしはそう言って、モニターをそっと撫でた。彼の顔に、その唇に指を伸ばす。
 彼も手を伸ばし、あたしに触れようとした。でも、感じられたのはモニターの蛍光灯が作り出す体温に似た生ぬるさと、滑りの悪い手触りだけだった。

『ああ、確かにそうだね……』

「うん……でも」

 でも? 何を言おうとしているんだろう、あたし……。いつか会えるよ、かな。でも、本当に? 本当にいつか会える? そう思ってる? ……それに、彼はあたしに会いたいと思ってくれているのかな。きっとそう訊けば、彼は言ってくれるだろう。いつも通りに、あたしが欲しい安全な言葉を。
 それで、二人はまた無難なやり取りを続けて、通信を終えるんだ。いつものように……。
Nコード
N0181JJ
作者名
雉白書屋
キーワード
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ジャンル
宇宙〔SF〕
掲載日
2024年 08月09日 11時10分
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