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アルハンブラ物語─星の詩、平和の書

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あらすじ
この物語の舞台は、十四世紀のグラナダ――アンダルシアの山影に抱かれた都です。 1232年、ムハンマド一世(イブン・アル=アフマル)が建てたナスル朝(グラナダ首長国)は、イベリア半島で最後に残るイスラム政権として、北のキリスト教諸国(とりわけカスティーリャ王国)と向き合い続けました。十四世紀にはユスフ一世と、その子ムハンマド五世の時代を中心に、城塞宮殿アルハンブラは拡充され、今日私たちが思い描く輪郭へと近づいていきます。
グラナダは地理そのものが境界でした。シエラ・ネバダの雪解け水はダロ川とヘニル川に集まり、畑と庭園を潤し、やがて地中海へと向かいます。港のマラガやアルメリアには地中海の商人(ジェノヴァ人を含む)が出入りし、海峡の向こう――マグリブ、たとえばモロッコのフェズやマリーン朝の宮廷とも視線が結ばれていました。戦の兆しが立つときでさえ、物資と噂は、しばしば風より早く往来したのです。
この都には、アラビア語の碑文、カスティーリャ語(ロマンス語)の口調、ヘブライ語の祈りが同じ空気の層を共有していました。法や信仰は一枚岩ではなく、互いの境界で摩耗し、ときに新しい形を得ます。詩が政治の言い換えとして読まれ、星表や暦の計算が宮廷の実務を支える――そうした文化の混交が、アルハンブラの水盤や回廊の静けさの中に、ひそやかに折り畳まれていました。
しかし、境界の土地は、いつも穏やかでいられるわけではありません。対外戦の圧力、貢納や同盟の駆け引き、そして宮廷内部の派閥と疑念。平和を語る声が「弱さ」とされ、対話が「裏切り」と疑われる瞬間が、幾度も訪れました。本作は、そうした緊張の季節を背景に、言葉と星と、まだ名づけきれない忠誠のかたちを描こうとするものです。
ここに登場する人物や出来事はフィクションであり、歴史上の人物名や出来事に触れる場合も、物語のために配置と関係を組み替えています。それでも、石畳の冷たさや水の音、夜空の澄み方、そして「記録」としての詩が持ちうる硬さだけは、史実が残した輪郭から遠く離れないようにと願いました。 どうか最初の数頁は急がずに。水の反射と星の配置が、ゆっくりと物語の奥へ目を慣らしてくれるはずです。
Nコード
N0154LP
作者名
雨宮余白
キーワード
ネトコン14 なろう感想企画 シリアス 女主人公 西洋 中世 群像劇 史実 ナスル朝、 グラナダ首長国 アルハンブラ宮殿 ユスフ一世 シエラ・ネバダ山脈 詩と政治 星図と暦
ジャンル
歴史〔文芸〕
掲載日
2026年 01月10日 23時20分
最新掲載日
2026年 01月10日 23時20分
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