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竜鱗の姫

あらすじ
それは呪いか、祝福か──。

ウルロク王国には、高い塔がある。
かつて竜を地に落とし倒した槍と呼ばれるその塔には、死んだはずの王女が捕らえられていた。
肌には竜の鱗があり、八十年の時を経てまだ少女の姿をしている彼女は果たして人間なのか。人間であるならば、なぜ空を突く高い塔に閉じ込める必要があったのか。

その檻の扉が開かれた時、彼女の運命も動き出す。

------------------

 彼女は炎を見ていた。

 空は、夜なのに昼のように明るい。
 煌々と燃えゆく高い尖塔を見上げながら、花びらのように降り散る火の粉を浴びているのに、ちっとも熱くない。
 涙が頬を伝うのを感じた。なぜ泣いているのかはわからない。自分の一部が失われていくような気がしていた。

「もう見るな」

 背後から抱きしめられて、はじめて自分の背中が凍りついたように冷たかったことを知る。あたたかなぬくもりは氷を溶かすようで、これ以上流すまいと堪えていた涙がどっと溢れて嗚咽が漏れた。
 肩を抱く彼の手を握りしめると、自分がここに確かに存在しているのだと実感できた。
 ありがとう、と言おうとしたのか、ごめんね、と言おうとしたのか──震える唇から、言葉にならない声がこぼれると、彼はいっそう強く抱き締めてくれた。

 塔を焼く炎は青かった。
 それはまるで自分の名前と同じ花のようで恐ろしく、時間が経つにつれ炎が赫くなりだしたことに、少しだけほっとしていた。
Nコード
N0140JY
作者名
十条ゆき
キーワード
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ジャンル
ハイファンタジー〔ファンタジー〕
掲載日
2025年 01月01日 23時00分
最新掲載日
2025年 01月01日 23時10分
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文字数
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