第二話:王様はどうやら生音しか興味が無いようだ
短いです
ギィ、と目の前の大きな扉が軋む音を響かせ、開く。
「もう…困りますぅ………。困りますです」
これまでのいきさつを語ろうか、面倒だけど。
脱走を図ってみた。が、ショタに捕まって泣きながら逃げないようにお願いされた。
以下略。
「大丈夫だよ……もう逃げないよ」
嘘だけど。
でも帰るだけで、逃げるんじゃないよ?
「むぅ……」
まだ納得してないように、視線を落とすが軋む音が止み扉が開くと、顔を上げる。
ショタが進むのに着いていく様に、部屋の中に入る。
中を簡単に説明すると、王宮みたい。以上。
中に入ると、俺の様な人はいないが、階段の上のゴージャスな椅子に偉そうに座るヒゲの中高年に跪く様に合計六人いた。
「かの者で最後か?」
「はい!…確かにこの方で最後になります!なりますですよ!」
階段の上のゴージャス(以下略)は低い声でショタに言うと俺に前に出るように促す。
どうしたらいいか分からないから、短く「はーい」と言うと、回れ右をして部屋から出る。嘘だけど。
前に進み、一番左に他の皆に合わせるように立て膝で跪く。
「うむ……では右から名を名乗れ」
偉そうにそう言うと、一番右にいた緑色の髪をした少年が顔を上げる。
「はっ!私はアブホース・リンストといいます」
「アブホースか……分かった。では次の者」
次は赤い長い髪をした青年が顔を上げる。
「私はトゥールス・チャーです」
「トゥールス・チャー…………チャー家の跡取りか」
「はい。しかし私は、家の名前を駆使しようなど汚い考えは持っておりません」
「………そうか。では次の者」
順番にイケメン(撲殺してぇ)が自分の名前を名乗っていく。
そして、面倒臭い事に自分の番が来た。
仕方がないな…ここは大人しく──…
「名はなんと申す」
「………チャーラン。問題です、俺の名前は何でしょう?制限時間は無限大…しかしノーヒント。さぁ、どうする!?」
「!?」
問題でもだすか……。
階段の上の(以下略)は驚いたように俺の顔を見る。
周りに控えていたらしい兵士は持っていた、長い槍を俺に向けてくる。
「無礼な小娘が!!」
「王に向かってその口の利き方は何だ!小娘だからといっても容赦はせんぞ!」
いや……もうそのギャグはうけないから。
うんうん、だから思ってもないギャグの小娘はいらねーよ?
だから早めに訂正しようか。怒っちゃーうーよー?
「よい」
「しかし……っ!」
「お主にもう一度問おう…名はなんと申す」
なんだよ………俺が悪い見たいじゃん…。
あーはいはい、真面目にやりますよ。
「……てっててーん。問題で──」
「もういい」
あれ?効果音が気に入らないんじゃないの?
それとも本場の音じゃないとイヤですか?擬音語はイヤなのですか?
我儘な王だなぁ……。
あれ?なんか違うかな?ま、いっか。
「あの…あの!!」
可愛いらしいショタの声が重苦しい部屋に綺麗に響く。
癒しだね、あの子は。
一家に一台、おk?
「なんだ?」
「いえ……あのあの……その方は分からないんじゃないんでしょうか?と、疑問を持ちました」
「分からない……だと?」
あー……だめだめ。
理解できない。日本語でおk。
つかここ日本なの?ドッキリ?ビックリカメラで撮影中?バカデミー大賞でもねらうの?
いやいや……にしても出来すぎ。完成度高いでしょ?むしろ出木杉君?
「分からないけど……髪とか眼とか黒だから異界からではないでしょうか?」
「異界……?」
その言葉に周りの人が息を呑んだ。
「分からないんですよ!?多分ですけど……異界の人が召喚されるのは前回にも例があります………あの…この方みたいな喋りではありませんでしたが、黒髪の黒い眼……同じでしたので…」
「確かに…………かの者よ…お主は違う世界から来たのか?」
ん?なんか厄介事?
だったら丁寧にお断りしたいんだけど…「面倒だからイヤ」だって。
まあ、しかし俺には野望というものがあるんだ──
「……ちゃーらん…さて、どうでしょう?」
知らない人にはむやみに自分の情報を流さない。
これ、大事でしょ?