第一話:ショタって萌えるな…意外に
不思議に国のアリス。
そこは名の通り不思議な国。
僕の記憶上では、アリスが二足歩行(という四足歩行を普通としている動物にとってありえない二本の足で歩く行為)で走るウサギを追いかけて
「あらあらまぁまぁ」
なんて、感嘆をもらし身を滅ぼす好奇心とやらをフルに発揮させてウサギを追いかけて、女王に目をつけられて、結局は
「という夢を見たのさ」
であっけなく終わる物語。
ん?間違ってる?
いや、あながち間違いではないはず。
まあ本音を言うと、不思議の国のアリスなんて一度も読んだ事ないし……。
んでー…面倒なので軽くはしょるよ、今の状況を。
目の前に、ウサ耳生やした可愛らしいショタとトランプの柄というか服全体がトランプのきぐるみ的なのをきてる人が数人に囲まれてたりします。
なんかアリスイメージさせるんだが…。
くっ、と現実逃避をするために目頭を軽く押さえると何を勘違いしたのかショタが心配そうに焦りながら、耳を動かす。
「あのあの!大丈夫かな?えっと……大丈夫なのかな?」
「あぁ…大丈夫だ……いま着々と現実逃避をしてるから……」
おし……出来ない。
いやいやいやいやいや…なんだよこの状況は…。
「落ち着いたのかな?あのねあのね…落ち着いてくれたのかな?」
落ち着いた、俺が落ち着きたいのと違う意味で落ち着いた。
「よかった!ぼくね、安心したよー」
ほっ、と胸をなでおろすように安心した様子で百万カラットに近い笑顔を見せる。
同時に耳も気が抜けたようにへなへなとしおれていく。
ふむ……実に面白い。
さわさわして、なでなでして、もふもふしたい。
すると、しおれていた耳をぴんと元気よく伸ばすと俺の手を握って、立たせようとする。
「君で最後なんだ!最後なんだよっ?」
「はぁ…………あぁ…?」
俺の手を引っ張ると、地下らしき部屋を出る。
外の廊下は王宮のような赤いカーペットに大きな窓、明るい日が窓から入っている。
昼間なのか?とかいうどうでもいい思念を、欠伸でかき消す。
そして人懐っこそうに、にこっと笑いかけるショタを改めて観察してみた。
服装は白いブラウスに、枯葉色のネクタイ。首から懐中時計をぶら下げ、ズボンはネクタイと同じ色にチェックがはいった可愛らしい短パン。
髪の毛は金髪で短く、顔は可愛く整っている。目も大きく、翠色のビー玉でもはめた様な綺麗な瞳。
ほう……これは将来えらいべっぴん確定だな。
しかし、残念ながら俺は男には興味がない。
いや、まあ言い寄られたら相手はするが興味はない。
むかしから、普通の人よりも女っぽい外見のせいで女よりも男にモテた記憶しかない。
俺の黒髪は肩ぐらいで男にとって長い、女には丁度いいくらいの長さで(一般的にはストレートボブだかどっかのボクサー的な感じの名前らしい)目も普通よりは大きく、据わっている。はっきりいって、喉仏もあんまり無い。
声が高いのはそのせいか?
背も微妙に小さく、言うならば女みたいなのだ。
あぁ、そうさ…そのせいであんまり良い人生じゃねーよ、このやろー。
「どうしましたのかな?……どうしたのかな?」
心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
可愛いなこのやろー……。
と、口に出しかけた言葉を(ありもしない)喉仏らへんで食い止めると、なんでもないよーと柄にもなく優しく頭をなでる。
ついでに耳も触ってみる。
ふにふにして、気持ちいい……。
ショタはふにゃふにゃと顔を緩ませる。
ふむ……これなら嫁にほしいかもしれない。
「ふにゃにゃ……で、でわでわ……ここが大広間になりますっ。既に皆様お集まりでございます」
そういうと、自分の何倍もありそうな大きな扉の目の前で行儀良くお辞儀をした。
ふむふむ……この中に人いっぱいいて、俺がここにいる理由がわかるわけなんだね?
「よし……案内ありがとな」
「い、いえ!ぼくは貴方様の様な美女(美しいお方)を案内できて光栄です!」
「……………………………そっか」
あれ、俺って生物学理上性別雄だとおもうんだけど。
ついてるよな?あぁ、ついている。
まあ落ち着け……子供には俺という下劣な奴からにじみ出る男らしいというオーラが認識できるはずがない。
落ち着け。
「大丈夫、落ち着いた…」
「大丈夫かな?大丈夫なのかな?」
「…おう」
ではでは、と仕切りなおすと腕を伸ばし、体をほぐす。
それを大人しくショタは見つめる。
「じゃあ………行くか」
「はい!!」
と、扉とは逆の方向……元来た道へと歩き出す。
そうだよなー……流されるようについてきたけどさ…ここおかしくね?
まあ行こうか。
俺がさっきまでいた部屋に。
んで、全員フルぼっこ確定……家にかえれんだろうな?
不思議の国を舞台に一回魔王退治をやりたかったんです…ごめんなさい