表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

不穏分子は減らすに限りますわ

湯浴みから出た後、シルビアンナとシルビリオは父親である皇帝に執務室へ呼び出された。


「アクトレシアとガダルタナバから聞いたが……また二人で好き勝手しおって。少しは自重を覚えないのか?」


執務机に座る美形な中年男性は、同じ白銀の髪を背に流しながらこめかみを押さえる。


シルベスター・ラド・アーデルシュタイン(43)。

アーデルシュタイン帝国の皇帝であり、二人の父親。


「御言葉ですが父上、事件は勝手に向こうからやって来る物です」


ニッコリ笑ってシルビリオが言い返す。


「それに、クオルナ侯爵家は反皇族派の中でも中枢を担う貴族です。同じ派閥であるロダン伯爵家と潰し合うなら此方の利になりますわ」


済ました顔をして、シルビアンナは答えた。


「お前達ならあらかじめ、事件を食い止められた筈だと思うが……それも見越しての結果か?」


「「勿論です」」


疲れた顔をしてシルベスターが聞くと、二人は満面の笑顔で答える。


「皇帝陛下、火急の知らせが入りました」


そこへ、ドア越しに声が掛かる。


「入れ」


直ぐに皇帝として切り替え、シルベスターが許可した。


「失礼致します、ロダン伯爵家王都屋敷をクオルナ侯爵家軍が包囲しました」


慌てた様子で、一人の燕尾服を着た青年が入って来ると、シルベスターに進言する。


黒髪の短髪、優しそうな顔立ちの青年は疲れた様子だ。


アーグリアス。

シルベスターに仕える飛竜王で、アクトレシアとガダルタナバの父親でもある。


侍従長と宰相を兼任しており、ほとんど飛竜になることはない。


「早かったな、……他の貴族も、皇族も両家の諍いには関与せん。静観を決め込むが……関係無い貴族や民が被害にあっては大変だ。飛竜騎士部隊を送り近隣の貴族や民の避難誘導をせよ」


「御意に御座います」


シルベスターに命じられ、アーグリアスは返事をすると踵を翻して退室していくのだった。



「あらあら面白くなりそうですわね」


「そうだね、楽しめそうだ」


シルビアンナとシルビリオは微笑む。




皇族の虎の子である、飛竜騎士部隊が民や貴族を避難誘導して区域から退去して直ぐ。


真夜中の1時過ぎに、クオルナ侯爵の軍勢がロダン伯爵家に攻め込んだ。


大事な娘を侮辱されていたと知り、クオルナ侯爵は自ら先陣を切る。


娘の罪は消せぬけど、その尊厳は守りたい親心。


ロダン伯爵家は、先代当主夫妻が少ないロダン伯爵軍を終結させ、籠城戦をしようとするが……。


クオルナ侯爵軍の勢いは凄まじく、ロダン伯爵一族は悉く討ち取られ、明け方にはロダン伯爵は滅びクオルナ侯爵軍の勝利となる。


それから数日後。



「クオルナ侯爵が静観を決め込んだ皇族に敬意を示し、反皇族派から皇族派に寝返った。元々、ロダン伯爵との縁談も反皇族派筆頭セダム公爵の取り決めだったらしい。娘の境遇を知り、セダム公爵と袂を分かったそうだぞ」


執務室で、シルベスターは二人に答えた。


「クオルナ侯爵家一族が此方に鞍替えしたなら、反皇族派も数が減りましたね」


満足そうにシルビリオは頷く。


「ふふ、切り崩しが成功したみたいで良かったですわ」


シルビアンナも微笑む。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ