ロジック
北海道で全ての予定を終えた悠は、一旦ロジックの本社に戻ることにした。
ロジックの本社は、東京に所在する。悠がいつもいる場所は、ロジックの支部に当たる静岡の三島だった。悠は、昔から富士山というものにとても惹かれていた。そのため、静岡という地に身を置き過ごすことが長かった。
「ただいま。」
1月ぶりの本社には何も変貌はなかった。本社に戻るのは久しぶりとなった。ロジックメンバーは自分を称賛して出迎えてくれた。称賛してくれていることはとても嬉しいが恥ずかしい気持ちも多かった。
着いて早々ロジックの代表に呼ばれることとなった。
ロジックの本社は、東京の中で広大な敷地を持ち、ビルは5つほど敷地内にある。そのビルはどれも20階以上はあり、どの中でも一番中心にあり一番の高層となっているビルの最上階にロジックの会長室は設置されている。
「久しぶりだな。」
悠は、会長の席に座っている女性に挨拶をした。
この気の強そうな女性は、セナ。現ロジックのリーダーであり魔法クランの集まりである魔法団連の会長の座にも着いている。
「お疲れ様です・悠さん。」
「会社としてあなたの名誉はとても有難いです。これで益々ロジックの最盛に繋がります。」
「ただ、あなたがこの会社を抜けるということには賛同できません。」
彼女は全てを知っているようだった。魔法協会の話がすでに伝わっていることで話を進めやすかった。
「今は私がリーダーという立場を承っていますが、この会社を設立したのはあなたです。実質的な権利はあなたにあると思っています。」
「何を言っている。」
「ここは君がトップの会社だ。俺が導いていく役割は終わっている。」
悠は、リーダーであるセナがそう考えているとは思っていなかった。この会社を成長させるためには自分が居なくなることが良いと思ってしまった。この会社は、自分に頼りすぎの面が多くあった。特にS級上位はリーダーとして導いていかなければいけないが、S級上位も自分に頼ることが多くなっている気がしていた。
S級上位は特に優秀な人材だからこそ新たなクランを作るなどをして魔法業界を盛り上げる人材になっていく必要があった。悠は、今まで様々な者を育ててきた。5大クランの代表は殆ど悠が面倒を見てきた者たちだ。ここを去ることは、人に頼り自分たちで行動をすることをさせてこなかった自分への罰とした。
「セナ、俺は今日をもってこのクランを脱退する。」
悠の意志は固かった。セナと話したことでやっと自分の責任と役割を再認識することができた。
「悠、待って・」
彼女が止める間もなく、悠は全く振り返らず部屋を後にした。
悠は、ロジック本社を後にし、自身が身を置いている静岡の三島へと帰還をした。
支社に着くと早速由香が出迎えてくれた。
「悠さん、どうなされたのですか?」
悠は全く意識していなかったが、いつもと様子が違うことを由香に悟られてしまった。
「今日でこの会社を辞めるから、後をよろしく頼む。」
悠は、なるべく早く北海道に戻る必要があった。由香との会話の最中にも関わらず、会社にある自分のデスク周りを片付け始めた。
「なんで辞めることになるのですか?」
「すまんな、魔法協会会長からZionのリーダーとして復興をしてくれって頼まれている。」
由香は悠の付き人を長くやっているだけあり、魔法協会会長の命がどれほど重要な任務かということを知っていた。さらに、会長の命には基本的に拒否権はない。それが、魔法士のルールであった。
―なんで・・・
由香はハンカチを取り出し、必死で涙をおさえていた。
悠は、由香との長い付き合いが減ってしまうのは寂しい気持ちがあり、彼女の気持ちを考えてあげられないことに申し訳なさを感じていた。
悠は、由香が泣いているにも関わらず、由香を慰める発言ひとつせず、作業を進めていった。
由香は、泣きながら部屋を出て行った。彼女が泣いて出て行ったことで多くの者が部屋に訪れてくるようになった。
悠は由香と同じように全員に伝えることにした。
彼らは、突然の悠の告白に理解が追いついていない様子だった。 中には、こちらに対していろいろ質問を投げかける者も多かった。
「なんでお前が辞めるんだ?」「俺たちはどうすれば?」そんな声が多く聞こえてきた。
いつの間にか部屋には20人以上が集まってしまっていた。全く作業が進まなくなってしまったので、話があるなら個別でくるように伝えた。
「悠さん、辞めないでください。」
そんなことを多く言われた。 俺が育ててきた大切な会社のメンバーにここで失礼な事は言いたくなかった。ここは、魔法協会会長の名を出し、仕方がなく国のプロジェクト参加だという事を知ってもらう方がお互いに良い別れ方ができると思った。
悠は、その日を最後に、ロジックを去った。
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