洞爺湖
「薫子ちゃん 現地まで頼むよ。」
「畏まりました。」
「現地まで送ったら、すぐに引き返してくれ。」
現地の状況が分からず、長くいればいるほど送ってくれる薫子にも危険が及ぶ可能性がある。そのため、薫子をなるべく返す必要があった。
悠は、いきなり先頭になる可能性があるため、ショットガンを備えた。
薫子の転移により一瞬で被災地である洞爺湖に着くことが出来た。
一面に広がった光景に悠と薫子は絶望した。建物は崩壊し、森が焼け焦げてしまっていた。その地は、3つの大きな魔力がうずめきあい混沌と化していた。
「薫子今すぐ戻れ」
薫子は、瞬間的にこの地を去ることが出来た。
―現地
「薫子どうだった?」
「やばい」
そう言い残し、彼女はフラフラしながら座り込んでしまった。 混沌とした魔力に当てられていた。
「こちら悠。状況を説明する。」
紺とした中でも、ギリギリ通信が届くことが出来た。
「ここは完全に終わっている。」
「Sランクの魔力を放つモンスターが3体。俺が見たこともないモンスターもいるが、火竜とサンダーバードは確認できる。あとは、氷の恐竜みたいな生物だ。」
「悠さん。 現地の状況は?」
魔法議会は、現地の住民や魔法士たちのことを最優先にしているようだった。
「至る所が崩壊している。この中で生きている者は、限られるだろう。」
「Zionのメンバーは確認できましたか?」
「分からない。 戦っていた痕跡も見当たらない。 ただ、これだけのモンスターと戦ったなら生きている可能性が低いだろう。」
悠は、すぐさま作戦を考えた。この状況は、最悪と言っても過言ではなかった。いくら不死身と言っても、流石に俺一人であの3体を倒すことは不可能である。ただ、他の地へ被害が及ばないように注意を惹き、門が閉じるまでの時間稼ぎをするぐらいだったら可能かもしれない。
モンスターは、こちらに気づいた様子ですぐさまこちらに向かって直線で走ってきた。
悠は、早急に対策を練らなければならなくなってしまった。
悠は、ショットガンを放った。
だが、ショットガンは長距離の精度は低く、弾は掠りもしなかった。
「中級氷魔法 アイススピア」
悠は、中級氷魔法を発動した。悠の手には、大きな氷のスピアが出来、それをサンダーバードに向け一直線に放った。
氷魔法で、サンダーバードの羽を貫いた。
サンダーバードの纏っている雷が激しくなったのが分かった。 サンダーバードの怒りを買うことは出来たようだった。
サンダーバードは、こちらの思惑通りに突進してきてくれた。
悠は、再びショットガンを構え、炎属性を付与した弾丸がサンダーバードの腹部を貫いた。貫いた部分には炎が発現され、ダメージをより大きく与えることが出来る。
悠は、さらに攻撃を連発し
氷属性と炎属性の弾丸でサンダーバード目掛けて連射していた。
サンダーバードは、尖ったくちばしで悠の腹部を貫いた。そして、悠を刺したまま上空へ一気に飛んでいった。
悠は、刺された状態でサンダーバードの目を狙ってショットガンを放った。
サンダーバードは避けられるわけもなく、そのまま被弾をしていた。
サンダーバードは怒り狂い、全身に高圧の電気を流し、悠を感電させようとしていた。
悠は、全身が焼け焦げ感電したが、その瞬間に再生が始まった。
サンダーバードは勝利を確信し悠をそのまま建物とぶつけることで振るい落とした。
サンダーバードは、悠に注意することなくそのまま天高く飛びあがった。
悠は、サンダーバードの隙を狙って魔法を発動した。
「木魔法 結び」 悠は、サンダーバードを木で動けないように縛り上げた。
サンダーバードは急いで魔法を発動しようとしていたが、悠のショットガンの充填スピードの方が速かった。悠は、サンダーバードに再び魔法弾を連発し、サンダーバードはダメージを大きく受けた。
さらに、ショットガンを連射しサンダーバードの体に数十発の傷を負わせることが出来た。
サンダーバードは、回復するまもなく攻撃を受け続け、疲弊が見られていた。
サンダーバードは力を振り絞り、辺り一体に落雷を落としていった。
ルイは、その雷を直撃していたが、雷に痛みを感じることはあっても、ほぼ意味がなかった。
悠は、サンダーバードへとどめの1発を撃とうと構えると、頭上に大きな影が現れた。
悠は、上空に気を取られ見上げた途端、サンダーバードが体当たりをしてきた。
サンダーバードは、先ほどくちばしに刺した状態で痛い目を見たから、強靭な羽で体当たりをした。 悠は、咄嗟のことで構えることが出来ず、その場で倒れ込んでしまった。
― グ ェ
その瞬間として上空から踏みつぶされ、肉体はボロボロになってしまった。だが、悠の再生スピードは、全身を再生するのに1秒にも満たない。そのため、反撃を生むチャンスが生まれた。悠は、ここに来る前に用意していた複数の爆弾を解除し、自分もろとも爆弾で吹っ飛ばした。爆弾の威力は高く、氷の恐竜の片足を1本吹き飛ばすことに成功した。
ただ、氷の恐竜は頭が良く、氷魔法を使用し自分の失った足を造形した。
回復魔法は傷をいやすことは出来るが、失ったものは取り戻せない。そのため、このモンスターが回復魔法を使っても、足が生えてくることはないのだ。ただ、特殊能力であるヒールを持っていれば再生することも可能だった。しかし、ヒールの能力は、死者を蘇らせたり、体の半分以上の欠損などが起こった場合は修復不可能な時もある。
サンダーバードが、隙を見て回復をしようとしていた。悠は、サンダーバードに対して重傷を与えたが、サンダーバードの魔力量は多いため、この程度だったら回復をされてしまう。サンダーバードは回復魔法を使用し、回復魔法を使い今までの傷は無かったものとした。ただ、回復魔法は魔力を多く消費するため、今もう一度サンダーバードに攻撃を食らわせられればまだチャンスはあった。
「炎属性付与」
ショットガンをサンダーバードめがけて放ったが、簡単に避けられてしまった。
ここまで戦って、得たものは、恐竜の足1本。悠は、覚悟を決めサンダーバード1体に全力で戦うことにした。
「雷魔法 雷散」
「炎魔法 業火」
悠は、複数の魔法を繰り出しサンダーバードを目掛けて放った。
流石に、ルイの魔法はサンダーバードを直撃し、サンダーバードを地に落とすことが出来た。ただ、倒しきるには威力が足りなかった。
悠は、サンダーバードに向けショットガンを撃ち続けた。悠は、サンダーバードが動かなくなるまで打ち続け、計100発ほどをサンダーバードに対して放っていた。サンダーバードは、その場で息を経った。サンダーバードの死骸は、形を保っていなかった。
悠は、あと2体を相手にする魔力は残っていなかった。ただ、魔力は残っていなくても被害を減らすようにチョッカイヲ駆けることは出来る。
倒れそうな体を起こし、ショットガンを火竜に向け撃ち込んだ。
火竜はこちらを振り向き、炎を振り撒いていた。
悠の体は、火竜のブレスによって一瞬で焼けてしまった。ただ、一瞬で悠の体は回復し魔法を放っていった。
― エン
微かに子供の声が聞こえてきた。声の下方を振り向くと瓦礫の山になっている倒壊した建物が立ち並んでいた。
火竜も子供の声に気付き子供の方向へ飛んで行ってしまった。
― マズイ
悠は、火竜にショットガンを撃ちながら子供の元まで本気で走った。
飛ぶ火竜の方が先に子供の近くに寄り、子供を殺すために魔法を発動し、ブレスを吐いた。
悠は、間に合わないと考え、自身に風魔法を使用することでより早く動くことを可能にした。悠は、火竜のブレスが届く前に、子供の元まで辿り着くことができた。
ただブレスを狙い撃ちされてしまい、悠は全身を使って子供を庇うようにした。
ブレスは1分ほど続き、悠は全身を焼かれるような痛みを味わっていた。
ただ、子供がいるから悠は動けない状況が続いていた。
―キャ
子供はこちらの気を知らず、笑っていた。
ルイは、先ほどのブレスを直撃したため、かなり消耗していた。さらに、悠の魔力もだいぶ減りつつあった。この状況では何もできないため、赤ん坊をできるだけ遠くへ飛ばすことにした。悠は、全力で赤ん坊のかごに風魔法をかけ、できるだけ遠くに子供を飛ばした。
- グェ
火竜は悠を上から踏み潰し、悠は火竜に掴まれ逃げることが出来なかった。痛みを感じることがあっても、死ぬことはない。耐えれば大丈夫。そう思い、少しの痛みを感じながら時は過ぎっていった。
戦い始め、1時間半ほどでやっと門が閉じ始めた。門が閉じ始めたら、モンスターは力を段々と弱めていく、そこの時間を悠は、待っていた。ただ、他の門からモンスターは帰ることが出来る。そこの、移動時間と次の門が発生するまでの時間が勝負だった。
彼らが移動をするとしたら札幌や函館と言ったS級ゲートから帰ることが考えられる。そのため、ここで何としてでも食い止める必要があった。
―ヒュ
火竜は突如飛び立ち、悠をその場に置いていった。
「悠さん、助けに来ました。」
そこには、総勢30名以上の魔法士が突如現れた。
「助かった。」
悠は、その場で安心したため気絶してしまった。
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