会議室
悠は、一瞬で魔法議会の会議室に着いた。
会議室の広い空間に既に大勢の人が揃っていた。会議室の中心には円卓が用意されていた。円卓を囲んでいるメンバーは、悠が見知った顔ばかりであった。
中には、この国の魔法議会の代表や魔法局の代表、各組織の代表などもおり錚々たるたるメンツだった。その円卓は17席用意されており、ほとんどの代表者はこの場に居ないので、オンラインの映像で参加をしている状態だった。
「悠様、お座りください。」
悠は、魔法議会会長に案内されるがまま着席した。
「五十嵐さんも着席されたようなので緊急会議を始めたいと思います。」
「今回起きた門は、北海道洞爺湖で発生いたしました。被害想定は死傷者3000人。対応に当たったZionのメンバーは消息不明となっています。そして、洞爺湖周辺で今モンスターを撃退できる人間はいません。」
魔法議会会長の話は簡単に終わった。
事の深刻さに皆静まり返ってしまっていた。
「Zionは、なんでそんな大人数を投入したんだ?」
「今日は、洞爺湖周辺でA級隊員の実力調査が行われていました。」
「タイミングが最悪という事か、魔法局から人を派遣していないのか?」
実力調査は大規模で行うため、魔法局からの人員で穴埋めされている。そのため、A級やS級の穴埋めをしているはずだった。
「人員を派遣しています。ただ、S級3名が消息を断っている場所に人を送ることが出来なくて・・」
当然と言えば、当然の結果だった。そんな危険な地にみすみす魔法士を派遣し、さらに魔法士が減ってしまったらこの国の大きな損失となってしまう。
ただ、手を何も撃たないと、現状で門付近の住民は危険な状態が続いてしまう。
「今派遣できる人数はどれくらいだ?」
「北海道で待機をしているS級が2名。 北海道周辺で待機をしているS級は3名。 転移魔法で送ることが出来る人数は4名というところです。」
「ただ、直ぐに派遣できるわけではないので、1時間以上かかると思われます。」
「単発で行ってもじり貧になる。 ある程度まとまった人数で掛かる必要がある」
S級5名以上でも倒せないモンスターだと派遣できる者たちが全て集まった状態で挑む必要があった。ただ、派遣したところで全滅もありうる。様々な意見が飛び交い意見がまとまらなかった。
特に、民間人を救出する必要もあるが、S級が消息を絶っているゲートに入って無事で戻れることはまずない。そのため、結論は、ゲートの消滅まで待ってから救出作戦を行うこととなった。
「悠さん、地域住民を助ける手は何かありませんか?」
魔法局長がこの話題を振るという事は、不死の悠に手助けをして欲しい言う意味だった。
民間人を見捨てたとなっては魔法局や魔法議会だけではなく魔法士全体に批判が殺到してしまう。打てる手は打っておくことに越したことはなかった。
「しょうがない。俺が行くか。」
悠は、考えを巡らせたが、自分単体で行って現状の調査でもしてくることが何かの役に立つと思い、行動することにした。特に悠は、再生の能力を持っているからこそ、死ぬ心配はなかった。 ただ、悠を派遣することで、転移で送れる人材の枠を悠に使うことになる。
それは、正しいか分からないが最善の選択であろう。
「悠さん。毎回あなたには迷惑を掛けます。本当に、有難うございます。」
「会長、ボーナス期待しているよ。」
「悠さん、ボーナスではないのですが渡しておきたいものがあります。」
会長は使いに頼みある物を準備させた。
それは、純金で出来た指輪だった。
「あなたの魔力を増やしてくれる物です。国宝なので大切に扱ってください。」
国宝を渡してくるとは、会長にこの救出作戦を一任されたという意味と同等だった。
彼女なりの誠意なのだろうが、責任の重さを実感させられた。
「それと、魔力値が高いと通話できなくなってしまうと思いますが、一応インカムを渡しておきます。」
「魔法局長、今すぐ準備してもらいたいものがある。 魔法短剣と高火力爆弾を用意してくれ。」
魔法局長の部下たちは、会議室の特別保管庫に向かい、悠に言われた通りの品を揃えた。
悠は、腰に魔法短剣を装備し、手には、ショットガン。そして、袋一杯に詰まった高火力爆弾を持った。
「悠さん。 任せました。」
魔法局長の目はいつになく真剣だった。
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