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20/23

個人戦

魔法今日競技祭本番は朝が早かった。競技祭は、9時に開始される。今日と明日の2日間にわたって行われる大会で、全試合がテレビ中継される。

個人戦の会場は、魔法協会所有のホテルの近くにあり、東京魔法競技場で開かれる。団体戦は、ホテルからバスで1時間程度のところにある森で行われ完全に自然を生かしたステージとなっている。


個人戦の会場は、各クランの代表には、特別席が用意されていた。日本一大きなイベントという事で、総理や魔法協会会長なども来賓として来ていた。

来賓席は8時には着席の指示があり、悠はそちらへ赴かないといけないため早くに起きていた。

有紗は、咲奈をはじめとしたメンバーが今日一日面倒を見てくれるので、心置きなく行くことが出来た。ただ、彼らが出場する際は、悠は来賓席から離れ有紗の面倒を見に行くこととなる。


あっという間に会場へ辿り着いた。魔法協会の指定されたバスに乗り5分ほどで到着できた。歩いて行く手段もあるのだが、今日はホテルの前を撮影者や観客が大勢押しかけており、とても歩いていける状態では無かった。


悠は、彼らと離れ一人来賓席へ向かった。

来賓席には大勢の重鎮が揃っており、悠は各クランの代表たちに挨拶をしながら来賓席に座った。

来賓席はこの会場の中で一番高いところにあり、会場全体を見渡すことが出来た。上から周りを見渡すと、Zionやロジックのメンバーそれ以外の知っている者たちが多くこの会場に駆けつけていた。


9時に、開会式が開かれ、魔法協会会長の開始の挨拶と共に試合の始まりが告げられた。

午前中は、個人戦のサバイバルゲームと本選1回戦だった。

本選に残れる32名を決める総勢438名による生き残りサバイバルが行われた。

倍率は14倍以上となりかなり本選出場が難航する予測がたった。


悠の想定では、Zionから生き残ることが出来るのは由香と咲奈だと思っていた。この1ヶ月で苦手の分野が克服しつつあり、さらに新たな領域へ足を踏み入れ始めた2名だった。


悠は、有紗の面倒を見るため来賓席を抜け出した。 仮面をつけたままだと正体がばれる可能性があるので、仮面を外して服装を変え有紗の元へ向かった。 この会場の中で悠の素顔を知っている者はZionやロジックのメンバーと悠が好意にしている友達だけだった。

ただ、大勢がすでに会場へ向かっているためあまり多くのものと遭遇することはなかった。

悠は、咲奈から有紗を預かるとメンバーを送り出した。


「頑張って来いよ。」


「はい。 有紗ちゃん見ててね。」

皆は、怯えているわけではなく、だいぶ落ち着いている雰囲気だった。


「うん。」


彼らは、自信満々に、会場へ向かっていった。 



「さあ、会場には個人戦を戦う者がすべて集まりました。 制限時間はありません。32名が決まるまでは戦い続けてください。戦えなくなったら手渡したバッジに魔力を通してくださいそうすれば結界魔法があなた方を守ってくれます。 結界魔法発動次第速やかに場外へ移動してください。 場外になったものはその時点で敗北です。 殺傷能力がある技は禁止、基本的に敵を気絶させるという事でお願いいたします。 もし、死に至らせる魔法や技を使用した場合、審判の方々に止めていただきます。」


「皆さん、それでは始めさせていただきます。」


「スタート」

観客のカウントと審判の合図で試合が開始された。開始の合図とともに複数の魔法が放たれた。さらに会場は濃い煙に包まれ、戦っている者の様子は全く分からなくなってしまった。


2分もすると風魔法が使われ始め、戦っている者の様子が分かるようになった。既に結界魔法を多数使用が確認され、複数の脱落者がいた。


開始わずか2分で150名以上の者がリタイアになってしまっていた。

Zionメンバーも数人脱落したようだった。


会場は、めちゃくちゃ混戦状態で、現役No1との呼び声が高いロジック所属の1位が複数人から狙われているのを確認できた。さらに、他のクランも、強いと言われている者たちを、グループを組んで狙っていた。彼らには、1v1となったら勝てないのは分かっているため、集団で狙って落とすという作戦のようだった。


ただ、S級上位の実力は本物で、自分を狙ってきている者たちを一瞬で焼き尽くした。彼らの高難度の広範囲魔法は、ルイには決してできない芸当だった。No1を恐れ、狙っていた者たちはたちまち逃げ帰ってしまっていた。


あっという間に、試合開始から10分以上経過した。100名が残っているかどうかというところまできた。Zionの中では、由香、咲奈、謙吾、凛がいまだに残っていることを確認できた。ただ、相手もA級上位以上しかいなくなっているため、かなり厳しい状況を突きつけられていた。


20分も経つと残っているのが、50名ほどになり、魔法士として名が通っている者たちだけになっていた。

Zionのなかで特に目立っていたのが由香だった。 由香は相手を倒し続けダウンをさせ続けた。彼女は体術も得意でいろいろな人の情報を知っているので、人に合わせて戦うことが出来ていた。


「見どころの試合となしました。 現役No1と艶麗の魔女咲奈がぶつかり合っています。」

注目のバトルを解説がアナウンスしてくれた。妖艶の魔女とは咲奈に付けられたあだ名であり、昔は誰もが憧れる母の抱擁を持っていることで人気だった。それなりの実力もあり、彼女に惹かれた者は、数多くいた。


「艶麗の魔女が魔法を仕掛けた~。 No1を炎が襲っている! 艶麗の魔女は連続の魔法発動を行い、攻撃を仕掛けていったー。」


「ただ、流石No1だ~。まだ、傷一つ追っていない。」


悠と有紗は、実況に映し出された咲奈の雄姿を見届けていた。

ただ、咲奈とNo1の決着はその場では着かなかった。バトルロワイヤルで他の者が2人の背後を狙っていたからだ。

咲奈は、自身の周囲に魔法を発動することで、自分の背後を取ろうとしていた敵が近づけない状態を作った。


会場中を覆うように煙が出現した。 凛の特殊能力だろう。ただ、高位の魔法士たちは彼女の自由にはさせてくれなかった。各々が風魔法を放ち煙があっという間に消えていった。


凜は、この場で力の差を知ってしまっただろう。特に、結界魔法と煙を同時に使用するという悠考案の技が使えなくなった。(結界魔法は、リタイア時のみの使用という形に突如決定した。)

凜は、一旦自分の周りに煙を発生させることで姿を消した。一旦見えなくする事で新たに作戦を練ることにした。


謙吾は、硬化の能力がこのバトルにおいて優れていた。彼は、魔法攻撃が来たら即座に逃げるという、何とも彼の逃げ足が注目されてしまっていた。


結局試合開始30分ほどで凛が33分ほどで謙吾が脱落してしまった。流石に上級の魔法士が優位のルールであるから彼女たちがここまで頑張れたことは喜ばしいことだった。


最後の1人を現役No1が倒し、32名の本選出場メンバーが決まった。

Zionからは由香と咲奈の2名が残った。

ロジックは15名も残り、やはり日本1のクランである事を証明した。

他は、5大クランが上位を占め、それ以外のクランは1名残るかどうかだった。


他の負けたメンバーが続々と観客席に戻ってきた。


「お疲れ。いい試合を見せてもらった。」


悠は彼らに一言声をかけた。あまり労いの言葉をいう事には慣れていなかった。


「帰ってきて早々悪いが、有紗を頼む。」


悠は、彼らの反省などを一緒に語らいたかったが、流石に来賓席にZionリーダーがずっといないのは目立ってしまう。足早に彼らの元を離れ着替え直し、来賓席へ戻っていった。


そのころ、個人戦の本戦の組み分けが行われた。

由香と咲奈は違う山になっており、お互いに結構面白い場所に入った。


由香は、1,2回戦はJMC所属のS級4位、ノア所属の同じくS級7位と当たる。その後、ロジック7位香菜と当たると予測がつく。彼女にとっては3回戦が正念場だろう。ロジックにいた時はお互い戦いあうことがなかったが、7位の実力は重々承知だと思う。


咲奈は、1回戦から関東魔法クラン5位の者と当たってしまう。関東魔法協会は日本で3番目に大きな会社であり、実力者も揃っている。5位まではS級上位となり、5、6位は次のS級上位との呼び声も高い。咲奈の実力的に勝つ確率は、半々というところだった。


先に由香の試合が行われた。

1回戦は、由香の魔法の前に敵は圧倒されてしまっていた。彼女が敵を倒すのにかかった時間は数秒というところだった。


咲奈の第一試合は、拮抗したいい試合展開をしていた。


「中級風魔法 カマイタチ」

咲奈は、相手のレベルを図るためにお試しに一発魔法を放った。

直哉は、近距離戦闘を望んでいたようで、咲奈に向かって一直線に走っていたが、咲奈の魔法攻撃の発動を見て、攻守を切り替え、魔法を放ち咲奈の魔法を撃ち消した。


直哉の攻守の切り替えのスピードと魔法の発動スピードはかなり早かった。

「最上級氷魔法、  絶対零度。」


咲奈は、魔法スピードだと勝てないことを察知し、時間がかかるが高難易度の魔法を使用することに決めた。


直哉は、自身の体を「風魔法」で浮かせ、簡単に最上級魔法を回避した。


「炎魔法 炎柱」


「氷魔法 氷の棘」


連続した中級魔法が咲奈を襲った。炎の柱が彼女をおそった。さらに氷の棘が地面から彼女に向かって出ていた。難易度の高い魔法を発動するほど、魔法を発動するスピードなどは変化する。さらに、高難度の魔法を使うほど、身体的な疲労なども課されていく。


咲奈は、ぎりぎり魔法を唱え終え、「土魔法 土壁」で自身を覆い炎の柱を防げた。ただ、氷魔法の氷の棘が土魔法を突き刺した。氷の棘は土壁を貫通し咲奈本人の元まで迫っていたが、スピードが遅かったため、咲奈に触れることはなかった。


ただ、咲奈の魔法が溶けた時、今にも倒れそうな咲奈の姿を周囲に見せた。そして、誰もが決着がついたと思っていた。だが、それが咲奈の作戦だった。

直哉は、咲奈の様子を伺いながらじっくりトドメを刺そうとしていた。そのため、魔法をまだ発動し始めていなかった。 咲奈は、直哉の一瞬の油断を見て上級魔法を唱え始めた。


「上級炎魔法 爆炎」


直哉は、咲奈の魔法が発動されるのを一瞬遅れて気づき、反撃の魔法を構成し始めた。ただ、早く構成させていた咲奈の魔法が先に完成し放たれた。直哉が逃げる間もなく、彼を爆炎が包み込んだ。

これは、隙をついた咲奈の勝ちで、余裕を見せた直哉が負けた。


2人とも1回戦を勝ち抜けが決まった。ただ、2回戦は2人とも相手が弱く、互いに難なく通過することが出来た。


昼の休憩を終え、互いに3回戦に向けて準備をしていた。


3回戦がお互いの勝負どころとなってしまった。

由香は、ロジックのS級7位の戟と当たる。勝算は3割あったら良い方だろう。

ロジックのS級7位は、S級の上位でもある。特殊能力者で身体変化の能力を持っている。

自身の体を10倍まで大きくでき10倍小さくできる。魔法無しだと絶対に勝てない相手だろう。


戟は、最初から体を大きくしているわけではなかった。彼は、分厚い鎧を纏っている。それは、彼の服がそこに閉じ込められているからだ。彼が大きくなると鎧が割れ、自動的に大きな服を着用できるようになっている。そして、戦いが終わると18センチほどに小さくなる。大きい状態だと、会場から出られなくなっているため小さくなるのだった。ただ、会場の中で着替えなければならないため、皆から気づかれないように、小さくなることで彼の裸は守られている。ただ、人前で裸になり着替えることはいつになっても慣れないという。


お互いに距離を取り、開始の合図を待っていた。


「スタート」

試合開始の合図とともに由香は魔法を放った。


「炎魔法 炎の渦」


戟は、「土魔法」で自身を囲うように土の壁を作り、簡単に魔法で防いでしまった。戟は、S級上位であるのは、ただ、身体変化の能力があるからではなかった。彼自身の魔法力や長年の戦闘技術が彼をロジック7位という地位を与えられている。


「雷魔法 雷冥」


由香は最上級雷魔法を放った。雷冥は、雷が至る所で鳴り響き、まるで冥府を見ているような感情にさせられるために名付けられた。


由香は、戟に勝つためには、魔法力で勝負することが必要だと思っていた。そのため、高難度の魔法を繰り出すことも厭わなかった。


「炎魔法 地獄の炎」


さらに最上級炎魔法を使用し、戟を焼き尽くすような炎を発現させた。


ただ、魔法攻撃は戟には当たらなかった。しかも、さっきまでその場にいた戟の姿が見えなくなっていた。


「氷魔法 絶対零度」


戟は、いつの間にか由香の背後に位置していた。 彼は、小さくなり姿を消し「風魔法」で風に乗りながら、由香に気づかれないように移動していた。 そして、最上級の水魔法を発動し由香を凍らせた。


この試合は、戦えなくなった時点で棄権となる。このまま凍りついた状態だと由香の負けとなってしまう。

戟は、試合の終わりを感じ、由香の方に歩み寄っていた。


由香は、根性から凍りついた状態で魔法を発動した。魔法は、声に出さずとも発動することが出来る。ただ、声に出すことでイメージしやすく魔法の失敗が少ない。彼女は、凍り付く前に、炎魔法を展開することをイメージしていたのだろう。

炎魔法で氷が解け始め、凍り付いていた由香は段々と姿を現せた。


全身の氷が溶け、由香は戟に向かって走り込み、戟を切りつけた。戟は、由香の攻撃を少し掠ったが、紙一重で躱し重傷を避けた。決して油断した訳ではないが、ここまで由香に詰められると思っていなかった。


戟は、顔に傷を負ったがダメージとしては大きいものではなかった。

由香が近距離戦を望んできたと思い、戟は巨大化をした。


サイズは10倍になり、17メートルぐらいまで大きくなった。

由香は、踝と膝の中間くらいの大きさでしかなく圧倒的な身体差があった。


由香は、連続して戟を切りつけ戟の足には複数の傷が出来ていたが、赤ん坊が攻撃してくるのと一緒で戟の足は太いため全く足一本を落とすことすら難しい。身体差が大幅にある状態ではどんな攻撃でも効きが悪かった。


今の彼を倒すことが出来るのは、間違いなく上級以上の魔法だろう。魔法の身体的ダメージは大きくなっても変化しない。さらに、サイズが大きい分、魔法の当たる範囲が大きくなり、魔法を回避しにくい。

戟が魔法を起動すると魔法力は小さい時と殆ど変化しないため、魔法を構成するだけでもかなり時間がかかり、魔法で防ぐことする難しい。

物理技はかなり無敵だが、魔法攻撃に弱い特性がある。


由香は、隙を見て魔法を発動しようとしていたが、戟は、魔法を発動する隙を与えなかった。

戟は、1メートル以上の拳で由香の方に向け振りかざした。

その拳の勢いだけで、会場に風が吹きあれ始めた。由香は、直接拳を食らわなかったが、その拳から発生した風を感じるだけで、拳にあたると一撃で終わってしまうというイメージをしてしまった。


由香は、すっかり委縮しているようだった。恐怖というものを目の前に感じてしまったら、人間は一歩を踏み出すことは中々できない。

戟が自身に向かって走ってくるのに恐怖を感じていた。

由香は、必死に上級魔法を唱えていた。「上級炎魔法 爆炎」

戟は、魔法を直接食らってしまった。ただ、このまま場外まで飛ばせば勝てると確信しており、頑張って耐え抜いていた。戟は、拳を振りかざし由香を場外まで飛ばした。


「決着―」


アナウンスが入り、この長かった1試合の終わりを告げた。


Zionの中で1位の実力がここで敗退してしまうのは悲しいが、良い経験になっただろう。まだ彼女も若いため、これからの成長に期待しかなかった。


次は、咲奈の試合となった。

咲奈の試合は、由香の時と異なり、短時間での決着だった。


試合は、魔法の応酬だった。どちらも魔法攻撃を得意としていて、上級魔法や最上級魔法が連発されていた。純粋な魔法力がモノを言う状態になっていった。咲奈は、頑張って相手の魔法を耐えていたのだが、相手は咲奈の防御を簡単に上回っていた。

咲奈は、相手の攻撃に耐えられなくなり、攻撃を何度も受けてしまった。

そのまま、敗退となってしまった。 咲奈は、相手に手も足も出ずの状況だった。


由香と咲奈は、観客席に移動してからも悲しそうな様子だった。3回戦負けともなったら、悲しいだろう。ただ、他は5大クランのエース級しか残っていない。良くやってくれた方だった。


個人戦は、優勝と準優勝がロジックのメンバーという、日本1のクランの力を誇示していた。


1日目のすべてのプログラムが終わり、ホテルに戻ると皆疲れた様子だった。明日の団体戦に向けてしっかり休息を取るように言っておいた。


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