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イベント

「悠、そういえば魔法大大祭が今年行われるって知っているか?」


懐かしの魔法大大祭。5年前に事件が起こってしまい、もう4年間開催されていなかった。年に1度のクラン対抗のイベントであり、新人の募集をするのにはありがたい行事であった。


「いつ頃行われるんだ?」


悠は、その行事がどれだけ大切か理解しているからこそ、その話には食い気味だった。


「今から1ヶ月後。 場所は東京魔法闘技場」


「それと、今回からは代表の参加もオッケーだそうだ。」


悠はその発言に驚いた。 

毎年、代表者は来賓席での象徴として居座っていなければならないという伝統があった。悠が、ロジックのリーダーになっていない要素の一つでもあった。来賓席から中々抜け出せず、様々な者たちとの挨拶の場でもあるため、堅苦しかったのだ。


これも魔法協会会長の考えであろう。悠は、会長が自分に対して「Zionの力を見せ、5大組織の一つということを示してこい」という意味に受け取ることができた。


今までの魔法競技祭は、各5大組織でメンバーを10名ほど選出し競技会場へ赴くというものだった。中小規模の組織は7名の選出をし、さらに小規模組織はクラン同士がチームを組んで行う。


人数制限を設けている理由は、この競技祭の時も門の出現は行われているからだった。そのため、なるべく組織に余裕がある状態でないと参加が難しい。


「門の対応は?」


「魔法協会が手助けに入ってくれるそうだ。」


この会社は、今圧倒的な人手不足である。そのため、参加すること自体が難しい状況だった。5代組織は、参加する者はA級の上位以上しかいない。それは、組織のメンツを保つということ、出場選手たちにレベル差による意識低下をさせないためだった。

5代組織というものは、この国の魔法業界を運営していく存在である。その者たちが、力を示せなかったら5代組織の名が廃れてしまう。


「参加したいが、参加できる人材が多くない。」


「悠、これはチャンスだぞ。」


拓実は、真剣な眼差しで語りかけてきていた。悠も拓実もこのイベントの大切さを重々承知だった。


「考えておく。」


1ヶ月後に大会ということで、さらに仕事が増えてしまった。ただ、人材が増えてくれているのでうまく仕事を回しながらやる必要があった。


「由香ちゃん。 もしすぐに移れるならZionにすぐに入社してほしい。」


「悠さん。畏まりました。 早急に戻ってきます。」


そう言い残し、彼女は足早にZion本社を後にした。





由香が再び姿を現したのは、次の日だった。


俺が寝ていた社長室にこっそり入っていた。


「おはようございます。悠さん。」


悠は、目をこすりながら起き上がると、上からニコニコと顔をのぞかせている由香がいた。


「なんでいるの?」


寝起きの悠は、いつもの怖いオーラは無く。優しく包んでいるような声で問いかけた。


「今日からこちらへの出社が可能になりました。」


昨日午後に出ていったばかりだったのに、短時間で戻ってくるとは、「流石」としか言えなかった。


悠は、そのまま起き上がり寝ていたソファーに座った。

由香は、早速お茶を入れ始めてくれた。


「ロジックの方は簡単に辞めれたのか?」


「はい、悠さんの元に行くと言ったら、皆さんすぐにでも行って手伝って来いと言っておられました。それと、移籍金の振り込みは急がないそうで、移籍の資料を預かってきました。」


やはり、ロジックのメンバーは情にあつい奴らが多い。その話を聞いただけで、悠は朝一から涙を流しそうなんっていた。


由香は、こちらに分厚い茶封筒を渡してきた。

茶封筒には、たった二枚の紙しか入っていなかった。 その一番上の紙に書かれていたことは・・


― 由香を引き抜く代金として¥50億請求します。


悠は、その途轍も無い金額を見て、飲んでいたお茶を吹き出してしまった。


「50億!?」


悠は、驚きを隠せず、由香の表情を窺ってしまった。


「悠さん、冗談ですよ。  もう一枚の紙を見てください。」


「悠さん、これは達成要件のみでの交渉成立とみなします。要件として私たちクランと共同事業を行ってください。そうしたら、50億は請求しません。」


「由香ちゃん、この共同事業というのは?」


「今現在離島への対応が余りうまくいっていないのは存じていると思います。その離島への派遣を魔法協会側から高額で要請を受けてしまいました。」


日本は離島の数が多い。特に沖縄の離島。支部が置いてある小笠原諸島以外への対応は、現地までヘリを飛ばし1時間以上後に門へとたどり着くことが出来る。そのため、その時間の被害は出てしまう。


そこまで大きなゲート発生に至っていないのが不幸中の幸いであった。

ただ、近年のゲートの異常を見るに今までA級ゲートのみだった場所にいきなりS級ゲートが現れることがある。そのため、この異常に対応しないと島がまるごと消える事もありえた。


ロジックが提示した条件は理解した。ただ、今は自分たちの会社の事で手一杯であった。

その旨を説明するために、ロジック代表に電話をかけた。


「由香、代表につないでくれ。」


「急いでつなげます。」


由香は自身の携帯を取り出し、ロジックの代表につなげた。


「由香、そっちに着きました? 」


由香の携帯からかけているため、里奈は電話の相手が由香だと勘違いしたのだろう。

由香と社長は年齢が結構近いため、昔から仲が良かった。 そのため、俺に話しかける時よりフランクに話初めていた。


「すまんな、由香じゃなくて。 由香から移籍条件は聞かせてもらった。今Zionの人員が不足しているのは知っているだろう。この状態では、何も手伝うことができない。だからこの条件を変更してはくれないか?」


「悠さんでしたか。」


里奈は少し声のトーンが下がりながら話し始めた。明らかに彼女は、悠と話す時と由香と話す時の差があった。


「あなたへ提示した条件は変えません。 ただ、条件自体を勘違されているのではないのでしょうか?」


「条件はZionに人員の派遣とお金の援助をして欲しいという事だろ。」


「そちらに関しては、そちらの会社が今の状況を脱してからで構いません。 今は、あなたに共同会社の特別顧問になっていただきたいのです。」


「特別顧問だと。何をすればいいんだ?」


「その離島計画が軌道に乗るまで会社運営についてアドバイスをいただきたいのです。」


悠は、すでにロジックを辞めている身。ロジックの内部情報などを熟知しているが、外部に映った俺に運営を任せるというのは、信頼という意味で信用しすぎの気がしていた。


「俺を信用しすぎじゃないのか?」


「悠さん、あなたの行ってきた実績をみんな見てきています。 もう少し自分の功績を褒め称えてください」


突然、少し怒っている様子の由香が、電話の話に割って入ってきた。


「悠さん。 あなたは、もう少し自覚が必要です。」  


社長にも由香にも怒られてしまった。 200以上年下の人たちに怒られるというのはなかなかない新鮮感だった。


「その条件を呑もう。」


「ただ、それはあくまで俺自身がロジックOBとして協力したいと思うからだ。 由香の移籍金に関しては、別途で払わせてもらう。」


悠は、勝手に会社を去った申し訳なさをどこかで返したいと思っていた。だからこそ、由香の移籍金は別途に払う事に決めた。


「悠さんがそうおっしゃるなら移籍金は半分の25億で手を打ちましょう。そして、正式に人を派遣しての会議を段取りますので、もう少々お待ちください。」


「悠さん、今後ともよろしくお願いいたします。」


彼女との通話は終わった。


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