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ハプニング

北海道札幌市ビール園でゲートが発生したとの通報が入った。門の魔力値はS級レベル。Zion本社のお膝元なので対応をよろしくお願いいたしますという事だった。


北海道の札幌付近のゲート発生はZion社員が対応する必要がある。俺がここに来てからは、魔法協会員やZionに残った社員たちがB級以下のゲート対応を行っていてくれた。ただ、S級2名はまだ入社してもらっていないため、S級対応をできるのは俺一人のみだった。


「誰か、今この付近にいるS級たちを呼んでくれ。」


S級ゲートには基本的に3人以上のS級隊員で対応する必要があるため、いまのZionでは対応できない内容だった。ただ、この付近のゲートはZionが管理することを決めたからこそ自分たちが先行して対応しなければならなかった。


「魔法協会に連絡。ゲートの場所と、転移魔法で呼んでくれ。」


「A級隊員3人ほど付いて来てくれ・」


悠はそう言い残し、A級隊員3名を引き連れ急いでZion本社のヘリポートに向かった。


ヘリで10分ほど掛かり現場に到着した。現場は、まだゲートが発生たばかりでモンスターの姿は見られなかった。


魔力値は日本全国にある計測値で発生源と階級が分かるようになっているため、実質的には派遣されてからの対応で間に合うことが多い。周囲の住民への避難の呼びかけなどがあるため対応できる者が現れる前に結界を張りに社員が向かう必要がある。


今回は結界を張ることが出来る部下を連れてきた。A級3人だが誰もいないよりはよいと思っている。


「君たち結界魔法を展開してくれ、俺が相手をしてくる。」


悠は、いつも通りショットガンを構えた。息を整えた。

ただ、ゲートに近づきすぎるとA級隊員ですら倒れてしまうため、広い範囲での薄い結界を張ってもらっている。


悠だけが、門の発生地まで近づくことができた。

基本的にS級の門では、A級下位はゲートの内部に入ると魔力の波によって倒れてしまうことが多い。A級上位ですら門に近づきすぎると倒れてしまう可能性があるため、発生源から離れて戦っている。


魔力の渦からモンスターが現れた。

悠は、吸っているたばこをその場に捨てショットガンに魔力を通した。

モンスターは、上位S級の白虎。 その真っ白の様相はいかにも強いというオーラを纏っていた。氷魔法が得意で攻撃が通りにくい厄介な相手だ。


悠は、火属性を通したショットガンを数発撃ち込んだ。


魔法の威力が小さいため、ダメージを与えられているようには思えなかった。

さらに1発を悠はポケットから取り出した弾を使い、ショットガンで撃ち込んだ。 白虎に着弾と共に爆発した。先ほどとは違いダメージが大きいように思えた。これは、魔法で弾を作り出すわけではなく、今回初使用の特殊な弾丸であった。

これは、白虎の肌を貫通し内部に入ると爆発するというもので、白虎の肌は少し削れていた。


悠は、連続でショットガンを撃ち続けた。 流石に白虎はそう簡単に倒れてくれるわけではなく簡単に躱されてしまった。


白虎はこちらに攻撃魔法を撃ってきた。氷魔法で悠の周りは凍り付き、悠も足場が凍ってしまい動けなくなってしまった。

悠は、火魔法を使いその場の氷を溶かし、何とか逃れることが出来た。


悠は、風魔法を使い自分の体を宙に浮かした。白虎は、空を飛べないので空からの攻撃で優位に立てると考えた。


白虎の上空20メートルに悠は立ち上から撃ち込んでいった。ただ、白虎はこちらを睨み高度な魔法攻撃でアイススピアが数十発と飛んできた。

一発でも食らったら体が真二つになってしまうような氷が猛スピードで飛んできていた。

ただ、悠は空中に浮いているためあまり素早くことが出来なかった。

白虎の攻撃が悠は避け切ることが出来なかった。

ショットガンを持っていた左腕に氷魔法が刺さり、悠の腕とショットガンが落ちてしまった。ただ、左腕はすぐに回復していった。


ショットガンを落としてしまったことで、腰に備えてある短剣を取り出した。

この短剣は、魔法を通すことによって、短剣に魔力を通すことによってショットガン同様に魔法効果を付与することができる。


悠は、地面に着地し、白虎に向け走り込んだ。白虎も近距離での勝負を受け入れてくれたようでこちらに走り込んできてくれた。


悠は、持っているナイフで白虎の足に傷をつけた。白虎の足に深い傷をつけ白虎の足は、魔法により燃えていた。ただ白虎も悠との体当たりで悠を遠くまで飛ばすことができ悠は、全身の骨が砕けていた。虎はさすが上位のS級だけのことはあった。深い傷をつけ魔法により足が燃えているのに、未だに四肢で立っていることが出来ていた。


白虎は、氷魔法を使用し、一瞬で自身の足の炎を消し傷を氷で塞いでいた。


悠は、再度白虎と向かい合った。悠は「炎魔法 爆炎」を使用し白虎を炎で包んだ。

その隙に、短剣を白虎の方向に投げ、目に短剣を突き刺した。

白虎は、怒り始めここら辺周囲一帯を凍りつくした。悠は、氷で足場がとられている中ショットガンの場所を確認した。 炎魔法を使用し、凍りついた足を溶かし、ショットガンの場所を目指して走った。

氷の中に入ってしまったショットガンを炎魔法で取り出すことができた。


白虎は、回復魔法で集中して目を治しているため魔法攻撃は飛んでこなかった。


悠と、白虎は体力勝負になっていた。 悠は、今回装備が軽装のため、中々装甲が厚い白虎と戦うには分が悪かった。


既に40分以上均衡した試合を続けていた。


―キー

高い雄叫びのような声が聞こえ、門の魔力が乱れ始めていた。

そこから現れたのは、サンダーバードだった。


サンダーバードの方がルイとしては、対峙しやすい相手だった。S級の中でも強さは下の方であり、何と言っても攻撃力が高いが防御力は低い。不死身の悠にとっては一番相性が良かった。ただ、2匹同時の出現となると話は別であった。

基本的なS級ゲートは1匹ごとの出現時間がだいぶ違う。そのため、1体討伐が可能である。討伐に時間をかけすぎたのと、異常による2つが重なり2匹同時討伐という事になってしまった。

悠は、ショットガンを構え魔法を充填し乱射するように二匹を狙って撃ち始めた。


S級二匹の意思疎通は優れていて、2匹が自分を囲うように真反対に構え始めた。2匹が魔法攻撃も連続して放ち、悠は回避が追い付かなかった。トータル50分以上戦っているからこそ、体力も限界に近づいていた。


白虎がルイに向け氷を地面から複数生やした。氷魔法は走って回避したが、ルイの上空から広範囲の雷魔法が発動され、雷魔法を直撃で食らってしまった。その場に倒れているルイを白虎はルイを氷漬けにしてしまった。


「炎魔法 炎の渦」


結界の外から魔法が放たれた。炎魔法が悠を包み周囲ごと焼き尽くした。突然のことで、2匹のモンスターは悠から距離を取った。


遠くから人影がこちらに向かってくるのが分かった。


「悠さんお久しぶりです。」


そこに現れたのは、由香であった。 


「由香ちゃん なんでここに?」


「S級隊員の呼び出しがあったので、遅れながら来させていただきました。」


―S級か

遂に彼女がS級となる日が来たことに喜びを感じていた。ロジックはS級になることが一番難しい。それは、A級上位でS級のライセンスを持っている者が多くいるからであった。

「悠さんお土産を持ってきましたよ。」


彼女は頑丈なアタッシュケースをこちらに渡した。 その中には、軍事用の爆弾や小型の拳銃など即座に使用出来そうな武器が山のようにはいっていた。


悠は、腰にピストルと刀を装備し、爆弾を手に取った。

サンダーバードと白虎は攻撃を仕掛けてきた。


「由香ちゃん 白虎の相手をしておいてもらえる? 俺は、鳥を片付けてくる。」と言い残し、悠は鳥側へ走っていった。


悠は、爆弾の栓を抜きサンダーバードを目掛け2つ投げた。爆弾は高火力でサンダーバードに大ダメージを与えていた。


―キョェー


鳥は、大きな雄叫びを上げ、怒りのあまり周囲に雷が落ち始めた。

ルイは、雷を食らってもそのまま走り続け、鳥の足を一本、刀で切り落とした。


鳥はその場に倒れ込んでしまった。ただ、雷鳥は暴れ始め複数の魔法が無造作に発動し、こちらへのダメージも大きかった。 悠は、サンダーバードと一旦距離を取り、遠くからピストルで数発撃ちこんだ。


雷鳥は回復に手を負っているのを確認し、再び隙を狙うように一瞬で詰め込み、刀で腹部に深く切り込んだ。雷鳥は、高度な雷魔法を発動した。ただ悠は、ここで仕留めることが出来ると思い、魔法のダメージがある中を耐えながら撃ち続けた。そのまま雷鳥は息を途絶えS級モンスター1匹の討伐を完了した。


悠は、疲労が蓄積している中、由香の援護に向かった。

由香ちゃんの現状は見えなかった。白虎との戦いで魔法下連発され、煙が立ち込み状況判断が難しかった。


悠は、ショットガンを置いた場所まで移動し、隙を見て遠くからの援護射撃を行った。

悠の援護射撃により、白虎はこちらの方を振り向いた。 振り返った瞬間を由香は逃さず、白虎を炎魔法で燃やしていた。

そのまま2人は何度も連続攻撃を重ねた。由香が魔法を何度も放ち、悠はショットガンで撃ち続けた。


2人掛かりで2匹のモンスターを討伐することができた。

悠は、一時間以上の戦闘で疲弊していたため、その場に座り込んでしまっていた。


元気が溢れている由香は、ルンルンでこちらの方に向かってきた。


「悠さん。 お疲れさまでした。」


「わざわざ来てくれてすまんな。 お陰で助かった。」


彼女はとてもテンションが高く、凄い楽しそうな様子だった。


「悠さん。私、強くなりましたよ。」


彼女の戦闘技術を見ていたら1ヶ月で格段に成長していることが分かった。これは、S級に成れたという喜びが彼女をここまで強くしたのかもしれない。


「ああ、 凄く成長したようだな」


「悠さん。真剣なお話があります。」


彼女は、まじまじとこちらを見つめていた。その彼女の表情は、いつにもなく真剣だった。


「もう、悠さんのお手を煩わせることはありません。なので、私をZionへ入れてくれませんか?」


彼女は、頭を下げ真剣にお願いをしてきた。

悠は、少しの時間思考を回し、彼女が入ることでの恩恵とそれによる弊害を頭で考えていた。


「すまんな、それは出来ない相談だ。 ロジックへの恩を仇で返すことになってしまう。」


ロジックは、俺が居なくなってからS級隊員候補の補充を急いでいると耳にしていた。そんな時に、Zionが新たに引き抜いたとなればロジックを完全に裏切る行為となってしまう。

ロジックに人員派遣を継続してもらっているのも含め、ロジックとは相対したくない状況だった。


「私がロジックを先に辞めれば、Zionに入れてくれますか?」


基本的に魔法士は期間契約となっている。その期間在籍をするという確約で、半分の額を月払いにし、お金が支払われる仕組みとなる。さらに、残りの半分は満了時に支払われる。その魔法士が契約期間内で他社へ就職する場合は、契約の違約金が発生し、等級と在籍期間によって変化する。

また、その会社を辞めたときは、穴埋めの代金を支払わなくてはならないため違約金と同額を元いた会社に払う仕組みとなる。これは、自主退社か移籍かによって変わり、自主退社だと辞めた本人が穴埋めの代金を支払う。しかし、移籍に関しては移籍先の会社が穴埋め代金を支払ってもらえる場合が多い。

由香の契約期間は2034年~2044年の10年契約であった。A級上位からの入社のため、契約金は10年で10億となり、残り5年残っている。そのため、契約満了までの5年分の2億5000万以上の支払いは必要だろう。さらに、さらに、S級になったという事は、新契約を結んだばかりかもしれない。そうなると、30億近く取られる可能性がある。S級にもなると5年契約で20億近くの契約となる可能性がある。


魔法士は、他の会社に移る時は元居た会社と新たな会社の移籍協議を経て他の会社に移ることで、会社同士の怒りを買わないことになっている。

移籍には、新たな会社が元居た会社への現金の支払いを行うことで解決する。それは、元居た会社の人員増加の経費に充てられる。

だいたいS級は10億~ の合意が多い。A級は1億〜 の合意が多い。


ただ、元居た会社を完全に辞め他の会社に移ることもできる。その場合は、元居た会社との関係は悪化し、他社との合同での仕事がほとんどなくなるため、仕事内容が減ってしまう可能性もある。しかも、その会社以降の魔法会社への就職はほとんど不可能となってしまう。さらに、元居た会社への穴埋めの支払いは自身で行わなければならない。


彼女は、ロジックとZionの協議の場を持つのではなく、完全にロジックを退職してからとなると、Zionを最後にするという事と同義だった。彼女は、相当な覚悟を持っての発言だった。


「少し考えさせてくれ。」

これは、俺一人の問題ではないため、他のZionメンバーの皆と話し合う必要があった。


「とりあえず会社に行くが一緒に来るか?」


「はい。付いていきます。」


この札幌の門が閉じ始めたのは、モンスターの討伐を完了してから30分後だった。ゲートが完全に閉じるまで討伐隊の隊員が居なければならないため、もう少々の時間門の監視をする必要があった。


悠は、A級隊員に討伐したモンスターの回収を依頼し、S級ゲートの対応完了となった。

A級隊員は、その場に残り回収業者などの対応に追われるが、悠は一足先に由香を連れZionの会社まで戻った。


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