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門《ゲート》

「五十嵐さん、伊東の地にて新たな(ゲート)が発生しました。対応をよろしくお願いいたします。」


「由香ちゃん。 了解」


悠は、急いで準備を整えた。悠は、戦いに赴く際の漆黒の仮面を手に取り腰には短刀と手にはショットガンを持った。


悠は、ロジック支部に併設されているヘリポートに向かい、ヘリで急いで伊東の地へ向かった。


ロジックの支部がある三島の地から伊東の地への移動時間は30分程度だった。

悠は、タバコを1本吸い戦いへの息を整えていた。


あっと言う間に伊東の地へ着いた。


ゲート付近のヘリポートにはA級隊員がこちらを待ち構えていた。


「五十嵐さん、よろしくお願いいたします。」


A級隊員は到着したヘリの傍にかけつけ、五十嵐に向かって頭を下げた。


A級隊員は、S級である悠に頭が上がらなかった。格式などを悠は好きではないのだが、皆悠を目の前にすると頭を下げざるを得なかった。


「君の所属と名前は?」


JMC所属 笠松 華 です。よろしくお願いいたします。


「笠松君ね。現状を教えてくれ。」


「はい。現在門は静寂を奏でています。ただ、ここはA級のゲートなのですが、出現するモンスターがC級ゲートで出現するモンスターのみで・・」


「どういうことだ。門に異変が起こっているのか?」


「はい、今回増田さんを派遣させてもらったのはこういう理由です。」


門から出現するモンスターは、その門の魔力値によって変化していく。そのため、強い魔力値の門にはそのゲート相応のモンスターが出現することが多かった。そのため、A級ゲートはA級、B級、C級以上のモンスターが出現するが、A級のモンスターの出現数が一番多くなる。


悠とA級隊員はゲート前に着いた。

ゲートは、結界魔法で周りを固められており、結界を空けてもらわないと中には入れない仕組みだった。

結界は半径約10メートルの半球の透明のガラスのようなものが取り囲んでいた。


「結界内部を見せてくれ」


笠松君に結界を開けてもらうよう頼んだ。笠松君は、内部にいる2名の隊員と連絡を取り、内部にいる者たちが結界を開けてくれた。悠は、彼に連れられ内部に入った。


ゲート内部に入ると、(おぞ)ましくどこまでも闇に吸い込まれてしまいそうな穴が存在した。半径4メートルほどで底が全く見えないので深さ分からなかった。いわゆるブラックホールに類似した存在だろう。


ゲート内部には、他の隊員2名がいた。


「お疲れ様です。よろしくお願いいたします。」


2人とこちらを見るとすぐに挨拶をしてきた。真面目に仕事をしていて、しっかり者であった。


「おう、よろしく」


「君たちの名前は?」


「萩原当真です。」「今村 久です。 あの伝説の五十嵐さんにお会いできて光栄です。」


「おう」


悠は、マスクで表情が隠れているが、少し照れているようだった。

悠は軽く挨拶をかわし、ゲートの状態を確認し始めた。


門の異変は一見では確認できなかった。ただ、A級ゲートとして登録されている割にこのゲートの魔力は圧倒的にC級のものと勘違いをしてしまうくらい低かった。


「このゲートが出現してどのぐらいたつ?」


「今でちょうど4時間というところです。」


「ここまで出現したモンスターは?」


「羅犬2匹というところです。」


悠は、状況を確認したが違和感しかなかった。ゲートが出現してから4時間もたって2匹のモンスターしか出現しないという事は異常だった。A級ゲートなのに、出現したモンスターは羅犬というC級モンスターだったのだ。C級ゲートにしたって、モンスターの数はもっと多い。


「もっと詳しい検査が必要だ。 調査員を呼んでくれ」

悠は専門家でもないため、この状況については分からなった。ゲートの異変が起こった場合は調査員を呼ぶことが一般的であるため調査員の派遣を要請した。


「今村君さ 国家魔法当局に電話つないでもらえる。ロジック五十嵐より緊急って」


「畏まりました。」


今村君は電話かけてから5分ほどして、こちらに携帯を渡してきた。


「五十嵐さん申し訳ないのですが、相手が五十嵐さんに代わってほしいそうで、」


悠は、仕方がなく電話を受け取った。


「こちら五十嵐、 何か聞きたいことでも?」


悠は、任せたことが戻ってくるのを嫌っていた。特に、悠はゲートの異常を監視していなくてはならないため、不機嫌な様子だった。


「悠さん、お久しぶりです。担当の山下です。 覚えていらっしゃいますか?」


その細く可愛い声には聞き覚えがあった。


「山下さん? どこかでお会いしましたっけ?」


悠は、昔の知り合い?と電話しているようで心が少し心が高まっていた。


「モルゲートアンに所属していた山下遙です。忘れてしまわれたんですか?」


モルゲートアン悠は懐かしい名前を聞いた。3~4年ほど魔法組織ランキングには必ずトップ5には入っていたクランだった。上位メンバーの大幅な離脱によりクランの地位失墜し、いつの間にか上位から外れ今ではクランが残っているのかもわからない。


その中のアイドル的存在だったのが遥だった。若干15歳でA級ライセンスを取得し、天才と呼ばれた存在。悠は、彼女と何度か一緒に仕事をしたことがあった。ただ、今は名前も聞かなくなり、アイドルと呼ばれていた時期は短かったように思っていた。


「思い出したよ。 天才少女か」


「はい、天才少女です。 そんな昔の恥ずかしいことを言わせないで下さい。」


彼女は昔劣らずの「天才少女」という決め台詞を言って見せた。彼女の中には、まだ天才少女という肩書が残っているのだろう。


「それで要件は?」


「局長に詳しい内容をお伺いしろという風に言われてしまいまして」


「局長か」


悠は局長をよく知っているため、局長なら段取りを踏まえて行動するのが読めていた。

良い人ではあるが、面倒くさい部分が多い人だった。


「伊東の地にゲートの異常が発生している。 A級ゲートなのにC級のモンスターしか出現しない。しかも、モンスターの出現率が低い。魔力計測値もA級を示していて、異常はない。これ以上の追加情報はない。」


悠は、今村君が伝えたであろう情報を繰り返すだけだった。 悠自身がこのゲートの異常が理解できていなかった。


「畏まりました。 それでは、悠さんはその場で監視をお願いできますか?」


「了解」


電話を切ろうとした瞬間だった。ゲートに異様な黒い影が走り、膨大な魔力が溢れだし、高濃度の魔力により結界にひびが入った。


「天才少女。 今すぐ近くのS級を3人よこせ 緊急事態だ。」


悠は柄にもなく電話に向かって叫んでしまった。それほどこの状況に危機感を感じていた。


すぐさま電話を切り、悠は、戦う準備をした。


「お前ら、無事か?」

結界内部にいたA級2名は、膨大な魔力によって気絶させられていた。


外にいた、今村君に彼らを外まで運び出してもらい、今村君には、外で結界魔法を強化してもらっていた。


悠は、結界内部に残り、戦闘態勢に入った。手に持っているショットガンを構え、いつモンスターが出現しても大丈夫な状態で構えていた。彼のショットガンは、魔力を通すことで様々な属性の弾丸となり射出できる。威力は高く魔力量もそこまで必要としないため、武器の中では一級品だ。ただ、至近距離と長距離での対応が難しいため、使っている者は他に見たことがない。


悠は、門からオンスターが出現するのを待っていたが、モンスターの気配は全くしなかった。さらに、門の魔力量が圧倒的に低くなり、B級以下のゲートと同じくらいの魔力量しかなかった。


30分以上たち、悠と今村君の緊張感は解れてきていた。


上空に1機のヘリの音が聞こえてきた。

「おーい」上空を見上げると、上空から3人が飛び降りていた。


高度100メートルくらいから飛び降りても平気な理由は、彼らが魔法を使用しているからである。

彼らは、音もなく地に着地し、こちらに向かってきた。


結界を今村君に開けてもらい結界内部に入ってきた。


「や、ほー 久しぶり悠」


そう話しかけてきたのは、MIT所属 井口 愛海 ブロンドヘアーが良く目立つ女性だった。格好もすごく、どうやってヘリに乗せたか分からないが、手には60㎝ぐらいの巨大なマグナム式のガトリング銃を持っていた。


井口の後ろには見慣れた人影があった。背はそこまで高くなく、大人しい雰囲気いで真面目な様相である。ショートヘアーが似合う、可愛い女の子であった。


「悠さん、お疲れ様です。」


「由香ちゃん、どうしてここに?」


「近くのS級が派遣できないという事で、私が派遣されました。」


彼女の実力はS級とは相違ない。S級認定試験も合格しており、S級予備軍というものである。この国では、クラン・会社ごとにS級の人数が決められており、ロジックではS級は10名が確保されている。ロジック所属のメンバーでS級になれる存在は、20名もいるという事態である。そのなかで、由香はS級予備軍の中で1番の実力者であり、ロジックを背負っていく有望な人材である。


― この国は、S級の人数を増やしてくれないかね~。人使いが荒すぎる。

今の状況を他の者たちと共有する必要があった。ただ、いつ門が暴発するかもしれないので、一人監視を置く必要があった。


「皆で話し合いをしたいから、由香ちゃん監視を頼めるかい。」


「畏まりました。」


由香は、忠実な部下であることに悠はありがたみを感じていた。


ゲートを由香に任せ、外に出ると聞き馴染のある声が聞こえてきた。


「久しぶりだな 悠」


そう声をかけてきたのは、ノル・デ・スタイン所属の猿川宏であった。

彼の愛称は、サル。悠とは10年以上の付き合いであった。彼とは1年ぶりの再会だが、こんな状況では再開したくはなかった。積もる話は多いが、それよりも事態の究明と対策が優先であった。


悠は、井口と猿川を門付近のコンテナハウスに呼んだ。

この、コンテナハウスはゲートが発生しやすい場所に元々設置されており、ゲート関係者の休憩場所となっている。


コンテナハウスに入ると、先ほどの魔力で気絶をしてしまった萩原と笠松が寝ていた。


「悠これは、どうなっているんだ?」


サルは、彼らが気絶してしまっている状況を呑み込めていなかった。S級隊員にもなるとゲートに近づくだけで、ゲートの等級を肌で感じ取ることが出来る。


「S級レベルの魔力値が発生した。彼らは、その魔力に当てられて気絶している。」 


サルは、困惑した様子だった。門からは、とてもS級の魔力値とは思えなかった。しかも、見渡す限りモンスターの出現は確認できなかった。


基本的に門は、発生から2~5時間程度で閉じる。基本的にモンスターの出現は、門が開いている時間は永遠に出てくる。C級レベルのゲートだと1時間で10体前後が基本である。だが、S級の門はそうではない。S級モンスターは、その門の発生中に数体しか現れない。簡単そうに思えるが、S級モンスター1体を倒すのにS級隊員数人で倒せるレベルなのでA級以下の門とはわけが違う。そのため、S級隊員を3名要請した。


「モンスターの出現はあったの?」


「俺が来る30分前はC級モンスターがチラホラ現れた。」


「あのゲートからS級の魔力ね。到底考えられない。」


全く解決の目処が立たず難航していたところに、調査員たち10名ほどが到着した。


悠は、研究員たちに今の状況を説明し原因究明を急がせた。

ただ、いつS級モンスターが出現するか分からない場所に調査員10名全員を投入し、守り切ることは出来なかった。

研究員を3名に限定し、悠、由香、井口の3人で内部の調査員の補佐、猿川に結界の維持を任せることにした。


結界内侵入後、ゲートの調査が始まった。

計測器の確認やゲート内部での魔力値の調査、モンスター出現の調査など複数の調査が行われた。

調査にかかった時間は1.5時間ほどだろうか、幸いだったのは調査中にモンスターは1匹も現れなかった。


調査隊とゲートを後にし、再びコンテナハウスに戻った。


「調査結果、この現象が分かりませんでした。」


「緊急で戻って魔法局で詳しい検査をする必要があります。」


流石に数時間調べた程度では、この異常事態の究明には至らなかった。


「確かにこの門はA級を示しています。ただ、モンスターの出現率が少なすぎます。」


「A級ゲートは10分以内にA級以下のモンスターが数体ずつ発生するはずです。この出現率はS級ゲートです。」

研究員たちを魔法局本部まで帰した。門が閉じ始めるまで観察をしていたが、結局何も起こらなかった。発生から4時間が過ぎ、自然と門は閉じ始めた。このペースだと門が閉じるまでは1時間かからないだろう。何事もないまま終わるのは有難いが、調査結果もまだわからないことが腑に落ちなかった。


伊東のゲートの終焉を見届けていると、一本の電話が入った。


「申し訳ございません。悠さん。緊急事態になってしまいました。」


「その声は、ナギちゃん。スピーカーにする内容を伝えてくれ。」


ナギは、ルイの所属するロジックに所属する緊急担当の者だった。彼女が電話をしてくるときは、何かトラブルが起こったときであった。そのため、彼女はイレギュラーというあだ名がついていた。


「今、北海道の洞爺湖にてS級の門が確認されました。」


「こちらも、異常が発生している。」


「北海道だとZionのグループがあるだろ。そっちに対応を頼めないのか?」


各地方には、その国を代表する魔法組織がある。中部や関東、北陸を幅広く担当するロジック。近畿や四国担当のノルディック。 中国地方、九州 沖縄担当のJMC。 関東や東北担当の関東魔法協会。そして、北海道担当Zion 。


他にも魔法協会に認定されている組織が多く存在する。ただ、日本を代表する5大クランは、各地の代表として国家が認定している組織である。


北海道のZionという組織は、魔法組織の中でも5番目に大きい組織であった。


「その対応していたZionのメンバーなのですが、S級3人とA級14人を連れて行っていたそうで、全員消息を絶ちました」


その場にいる猿川、井口、五十嵐の3人とも凍り付いた。

A級は下位と上位があるが下位だと10人でS級と同じぐらいになるため、実質S級4人以上いても勝てないモンスターが出現したことになる。A級上位だと1~5名でS級と同じレベルと呼ばれている。

「残っている、S級はいないのか?」


「北海道に残っているS級は、若干名になり、今は敵の総数やレベルなどが計り知れぬため、派遣できていない現状です。」


「詳しい内容をくれ。」

悠は、情報を聞かないと何も対応できないと思い、詳細な情報を求めた。


―シュ

音とともに、急に人影が現れた。


音と共に現れたのは、メイド服を着た10後半の少女だった。


「悠様、私と一緒に来ていただけますか?」


少女は、国家魔法局に所属する薫子だった。彼女は、自分と同様に特殊魔法を持つ人物である。彼女の特殊魔法は瞬間移動であり、国家が所有した方が良い能力故、高額な金額で魔法局に雇われている。


彼女は、緊急事態が発生すると彼女が必ず自分を迎えに来る。彼女に会うと大変な一日になるため、なるべく会いたくない人であった。


「愛海 宏 この場を頼む。 人員を追加で派遣してもらうから。」


井口と猿川にその場を任せ、悠は魔法議会の緊急会議に参加することとなった。


「私たちは大丈夫。由香もいるでしょ。」


彼女たちは、笑顔で見送ってくれた。確かにS級同等の力を持つ由香もいるからそこまで心配する必要はなかった。



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